小野薬品工業の相良暁社長(61)は共同通信のインタビューに応じ、主力のがん免疫治療薬「オプジーボ」の特許切れを見据え、ベンチャー企業のM&A(企業の合併・買収)などを通じて新薬の開発体制を強化する方針を明らかにした。オプジーボの特許収入配分をめぐって対立するノーベル賞受賞者の本庶佑京都大特別教授とは「代理人を通じて交渉しているが進展はない」と述べた。
小野薬品の2019年9月中間連結決算は、売上高に当たる売上収益が過去最高の1490億円でオプジーボ関連が6割近くを占めた。足元の業績は好調だが、28年から国内外で特許が段階的に切れるため、新たな収益の柱を育てる考えだ。
相良氏は「オプジーボと同じような大型新薬を生み出すことは当然狙うが、1つで賄うことは現実には難しい。いくつかの新薬を合わせて(穴を)埋めたい」と話した。新薬の候補となる物質を開発するベンチャー企業の買収を有効な選択肢の一つに挙げた。
また、自社単独で開発や販売がほとんど行えていない欧米で体制づくりを進めるとした。
本庶氏はオプジーボの基となる物質を発見し、小野薬品と特許収入契約を結んだが、金額が著しく低く不当だとして引き上げを求めている。相良氏は交渉が「膠着(こうちゃく)状態だ」と認めた上で、期限を設けず話し合いで合意を目指す考えを示した。