大阪で親しまれてきたアイスコーヒーを指す「冷(れい)コー」という言葉がほとんど聞かれなくなった。大阪市中心部で、道行く人たちに聞くと、2割以上が知らず、7割が知っているものの使っていなかった。夏だけでなく季節を問わずに楽しめる喫茶店の定番メニューだが、バブル経済の時代以降、喫茶店が激減する中、アイスコーヒーに取って代わられたとみられ、死語になりつつある。(張英壽)
全然意味分からない
「全然意味が分からないし、聞いたこともない。(言葉が)短いという良さはあるけど、アイスコーヒーのほうがいいのでは」
「『冷コー』を知っているか」-。大阪・ミナミ(大阪市中央区)で昨年11月、20~60代の30人に質問したところ、最初に応じた大阪市阿倍野区の男性会社員(26)はこう打ち明けた。
アンケートでは「冷コー」を知っていれば「今も使うのか」とも質問。結果は「知らない、はっきりとわからない」が7人(23%)で、「知っているが使わない」が21人(70%)、「知っているし使う」は30代と60代の2人だけだった。
年代別では、「知らない、はっきりとわからない」と「知っているが使わない」が20代でそれぞれ6人と4人、30代で1人と5人。40代より上の世代は全員言葉を知っており、「知っているが使わない」が40代で7人、50~60代で5人だった。知らない比率は若い世代で高かったが、20~30代で知っていた人も漫画や小説で読んだり家族から聞いたりするなど間接的に覚えたという回答が目立った。
コンビニでは「何?」
50~60代は10~20代まで使用していた。なぜ今は用いないのだろうか。
堺市北区の自営業の男性(51)は「大学生の頃までは使っていたが、昔ながらの喫茶店が減り、行くことが少なくなった。スターバックスなどに言っても『アイスコーヒー』と書いてある」と説明。大阪府吹田市の男性会社員(60)は「古い喫茶店が減って、(ほかの店では)何となく『冷コー』という雰囲気ではない」と話す。
極めて少数派の「知っているし使う」と回答した大阪府岸和田市の男性会社員(63)は「たまにぽろっと出てしまう」と笑うが、「コンビニで『冷コー頼む』と注文したら『何ですか』という答え。若い人には『今時、そんな言葉は使わない』と言われる」と戸惑う。
「知っているし使う」と答えたもう1人、大阪市淀川区の男性会社員(34)は「マージャン店では基本、『冷コー』で通じる」と教えてくれた。「マージャン店に行きだした頃は『レイコちゃん』がいるのかと思った」と笑うが、店で覚えたという。