インターネットを利用した商品取引が急速に普及する中、商品の配達時に代金と引き換える「代引き」サービスをめぐるトラブルが顕著になってきている。注文した利用者が、商品が届いたのに「気が変わった」などと受け取りを拒否する悪質なケースも相次ぎ、店側の経営を圧迫。消費者のモラル低下が原因でサービス中止に踏み切る企業も出てきた。泣き寝入りせざるを得ない立場の店側の被害総額がこのまま膨らめば、トラブルを防止するための新たな法的手段も必要となりそうだ。(大渡美咲)
雑誌で何度も取り上げられるなど話題のチーズタルト専門店「リトルローザンヌ」(岡山県)も、代引きに頭を痛めている店の一つだ。《気が変わった》《お金がない》《忘れていた》。注文者がさまざまな理由を並べ立て受け取りを拒否するケースは月40件ほどに達することもあるという。
チーズタルトは賞味期限が短く、返品されたものは廃棄せざるを得なくなる。さらに、代引き拒否の商品代は受け取ることができない上、店側への返却時の送料負担ものしかかり、同店の渡辺昭太専務は「(代引き拒否による)損害は小さくない」と訴える。
代引きサービスはクレジットカードを持たない人やコンビニエンスストアで決済しようにも近くにコンビニがない地域に住む人も利用できるため、人気が高い。渡辺専務は「店側は弱い立場。やめようにもやめられない」と訴える。
怒りあらわ
公正取引委員会で勤務経験がある、あさひ法律事務所の山本陽介弁護士によると、代引きを拒否した場合、法律上は注文した側に商品返品に際して発生した余分な送料を負担する義務が生じる。ただ回収には手間とコストがかかり、「泣き寝入りせざるを得ないのが実情」という。
こうした中、代引きサービスそのものをやめる企業も出始めている。玩具大手バンダイは昨夏、公式ショッピングサイト「プレミアムバンダイ」で取り扱っている商品の一部について、代引きなどの後払いの中止に踏み切った。ホームページによると「代金引換時の不正行為や後払い決済での規約違反行為などの悪質な迷惑行為が発生している」とその理由を指摘している。