中小企業へのエール

恐竜絶滅に学ぶ 環境の変化への対応が肝心

 京都先端科学大・旭川大客員教授・増山壽一

 まだ先だと思っていた東京オリンピック・パラリンピックまであとわずか。今まで以上に、“変化”と“チャンス”の年になることは間違いない。さあ、この一年、どう「進化」していくか皆で考えよう。

 ところで、ダーウィンに代表される進化論の系譜。そこには有神論とも結びついて、古代から多くの説が繰り広げられてきた。最近ではDNAの解析なども進んだ結果、遺伝子的な分析に基づいた進化論が主流のようになってきている。微に入り細をうがって分析が進み、どの遺伝子の影響で突然変異が生じて、個体に変化が生じたのか、その分析も進められている。

 では、なぜ爬虫(はちゅう)類から進化し誕生した恐竜は古生代、大繁栄していく中で巨大化していったのであろうか。所説によると、当時は二酸化炭素(CO2)濃度が高く、気候は温暖で、食べ物が豊富であったことや、爬虫類は変温動物なので、体温を一定に保つ必要がないがために大きくなった。仮に体温が下がっても比較的問題がなかったなどが言われているが、どうも昔からしっくりこない説明だと感じていた。

 そんな時、昨年の台風15号の風速40メートルを超える暴風雨のすさまじさとその被害を見て、あることを思いついたのである。恐竜の繁栄した古生代、CO2濃度が高く、高温であった時代は、現代の温暖化の何倍もの温暖化であったはず。

 そうすると、毎年異常気象であり、暴風雨が当たり前のように吹きすさんでいたはずである。建物に避難することもできない当時の恐竜などの生き物は、全てがその暴風雨から身を守るために巨大化していったのではないか。まさしく、異常気象などの環境に対応すべく、進化していったのではないか。

 しかし、その巨大化が、次の寒冷期には命取りであったのである。体温が急速に奪われた恐竜たちは絶滅の道を突き進むのだ。暴風に備えて飛ばされないように二重三重に武装して、しかし、世の中の環境が一変した瞬間にその武装した重い体が絶滅を招く。

 なんとも企業経営にも「ある・ある」的なことでないか。では、どうすればいいのか。大きさを求めず、飛ばされないように隠れる(知恵を持つ)、もしも飛ばされてもいいように多くの子供を持つ(分散化する)、変化を機敏に察知して対応する、などが大事ではないか。

【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。旭川大学客員教授。京都先端科学大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。前環境省特別参与。著書「AI(愛)ある自頭を持つ!」(産経新聞出版)。57歳。

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