回顧2019

原発マネー還流、信頼失墜 関電隠蔽に批判、全容解明は途上

 関西電力の役員ら20人が原発の立地する福井県高浜町の元助役から計約3億2000万円相当の金品を受領していたことが判明し、八木誠会長(当時)と岩根茂樹社長の両首脳が退陣を表明した。元助役には、関電の原発関連工事を受注した高浜町の建設会社から約3億円が手数料として渡っており「原発マネー」が還流した構図が明るみに出た。

 関電は問題を把握し、社内処分も実施していたが公表を見送っていた。隠蔽(いんぺい)体質は強い批判を浴び、関西を代表する巨大企業の信頼は地に落ちた。弁護士らでつくる第三者委員会が再調査を始めたが、全容の解明はなお途上にある。

 高浜町の建設会社「吉田開発」に2018年1月、金沢国税局が強制調査に入ったことを発端に、高浜町の元助役、森山栄治氏(故人)が関電役員に多額の金品を渡していたことが発覚。19年9月の報道を受けて岩根社長は記者会見し、20人が現金や小判、金貨、スーツの仕立券などを受け取ったと認めた。八木、岩根両氏は続投する意向だったが世論の批判が強く、10月の3度目となる記者会見で辞任を表明した。

 問題は地元行政にも波及。福井県は11月、現職幹部と元幹部ら計109人が森山氏から現金や贈答品を受け取っていたとする報告書を発表した。12月には市民団体の呼び掛けに応じた告発人3272人が関電幹部12人への告発状を大阪地検に提出した。

 第三者委の但木敬一委員長は12月に記者会見し、計700人超に聞き取りや書面調査を実施したと説明。「人数や金額ではなく、もっと大きな広がりを感じる」と問題の根深さを示唆した。

 森山氏が金品を渡した目的は何なのか。受け取った関電の意思決定にどう影響したのか。問題の核心はまだ判然とせず、第三者委が20年1月以降に取りまとめる報告書で真相に迫れるかどうかが焦点となっている。

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