統計学や人工知能(AI)を駆使してデータを分析し、課題の発見や解決に導く「データサイエンス」教育に力を入れる大学が増えてきた。膨大なデータをマーケティングや製品開発に活用できる人材が、広く求められているためだ。理系・文系の枠にとらわれない分野で、文部科学省も、モデルとなるカリキュラムを作って後押しする。
データサイエンスは、医療データを解析して病気リスクの発見に生かしたり、ネットショップの検索履歴から利用者の消費動向を予測して商品を提案したりするなど、幅広く活用されている。
滋賀大は2017年度に、全国初となる文理融合型の「データサイエンス学部」を新設した。金融やサービス業など100を超える企業と連携し、統計学や情報工学の基礎を学んだ上で、提供されたデータの分析などを通じて実践力を磨く。現在は院生を含めて約320人が学ぶ。
地元のバスケットボールチームと組むプロジェクトでは、選手やチームが勝つために必要な情報収集と分析を担う「スポーツアナリスト」を目指す学生5人が参加。提供されたデータを基にチームや対戦相手を分析し、戦術に生かしている。
専攻を越えて、データサイエンスの教育に乗り出す大学もある。筑波大は全1年生の必修科目として10月から開講。総合大学では全国初という。
東北大も20年度以降、全ての新入生に対し、データ処理などの基本を学ぶ授業を必修化する。
政府は、全ての大学生がデータサイエンスを学べる環境整備に力を注ぐ。16年12月、国立大6校を拠点校に選び、教育のカリキュラムや教材開発に着手。今年1月、国立大20校を協力校に指定し、全国展開を目指している。6月には、AIを使いこなす人材を年25万人規模で育成する目標を掲げた。
東北大の滝沢博胤副学長(教育・学生支援担当)は「これからの世の中はあらゆる場で膨大なデータから必要な情報を取り出して最適な答えを見つける能力が求められる。デジタル社会に必要な素養を養い、社会で活躍する人材を輩出したい」と話している。