スポーツや美容分野で遺伝子分析を活用するサービスが広がっている。管理栄養士らが結果を基に、個人の体質に合わせた体質改善や栄養管理を提案。長寿化で健康への関心が高まる中、検査結果を具体的に生かす取り組みだ。
球は速いがコントロールが不調なこの子は、持久力につながる「遅筋」も鍛える必要がある-。甲子園やプロ野球を目指す球児らが練習に励む甲子園サイエンスラボ(兵庫県西宮市)では、練習内容の考案に遺伝子分析を活用する。競技に必要な筋肉量などが分かり、個人の体質に合わせた内容が組めるからだ。
個別に考えた練習をすると、球のコントロールが良くなるなど実際に効果も表れるという。代表の加藤友樹さん(43)は「科学的な裏付けが分かれば本人も納得して練習ができるし、パフォーマンスも上がる」と喜ぶ。
ラボが活用するのは、業務用遺伝子検査メーカーのグリスタが展開するサービス「イデンシル」だ。検査では綿棒で頬の内側をこすって細胞を採取。サービスを使う企業は結果を分析し、顧客の体質や要望に応じ食生活改善などを提案する。栄養士やスポーツドクターのほか、企業や自治体、学校が導入するなど活用が広がっている。
グリスタ代表取締役の斎藤利さん(40)によると、従来は結果が出ても顧客への説明が足りず、十分に活用できていなかった。「遺伝子は、知るよりどう生かすかが大事。正確な検査に加え、専門家らが分析することが重要だ」と強調する。
女性の関心が高い美容やダイエット分野で生かすのが、ネクシィーズグループだ。全国で約10店舗を展開するセルフエステ店「BODY ARCHI(ボディアーキ)」で、自ら開発した遺伝子分析サービスを提供。検査結果の冊子は約70ページに上り、「糖で太りやすい」など体質の特徴のほか、適した食材やレシピなど普段の生活にも役立つ情報が満載だ。
利用者はこの情報を基に効率的なダイエットに取り組め、「やる気が出る」など好評だ。
管理栄養士の磯崎智子さん(29)は「買い物で食材選びに気を付けるようになったとの声も聞く。自分のことがよく理解できるので、末永く役立ててほしい」と話す。