社説で経済を読む

ヤフー・LINEが経営統合 「攻めより守り」の統合か (1/2ページ)

 検索大手ヤフーを運営するZホールディングス(HD)と無料通話アプリを手掛けるLINE(ライン)が、経営統合することで基本合意した。

 ヤフーのログインIDの利用者は約5000万人。LINEは国内で約8000万人、タイなど海外も合わせると計1億6000万人超が利用している。両社の国内利用者数は単純合算で1億3000万人を超え、楽天など他の国内IT大手を大きく上回る。

 各紙社説が一致して指摘したのは「規模の利益」である。日経は11月15日付社説で「統合により、国内の幅広いネット利用者を網羅するサービスが展開できるようになる。競合していたスマートフォン決済でも主導権を握ることになり、相乗効果は大きい」との見方を示した。

 だが今回の経営統合には、攻めというより、企業防衛的な側面が目立つ。(産経新聞客員論説委員・五十嵐徹)

 互いの弱点補う狙い

 ネット業界では草分け的存在のヤフーだが、若年層の顧客拡大に不可欠な会員制交流サイト(SNS)の分野では出遅れが目立つ。一方のLINEは、通話アプリでは若年層を中心に抜群の知名度を誇るが、利用者拡大では壁に突き当たっている。足元の業績は厳しく、1~9月期連結決算は最終損失を計上した。

 経営統合には互いの弱点を埋める狙いもあるのだろう。ただし問題は、それがシナジー効果を生むかどうかだ。

 ZHDの川辺健太郎社長は記者会見で「米中に次ぐ第3極になりたい」と語った。

 米国のグーグル、アップルなどの「GAFA」や中国のアリババグループなど「BAT」と呼ばれる巨大IT企業に対抗するには、まずは国内の基盤固めが欠かせない。「米中のIT企業が攻勢を強めていることへの危機感が、再編を後押しした」(11月21日付読売社説)ことは確かだろう。

 だが、世界展開する海外勢との体力差はまだまだ大きい。GAFAの一角、ネット通販を手掛けるアマゾンの売上高は世界で25兆3000億円に上る。これに対してヤフーとLINEの売上高は合わせても1兆1000億円にすぎない。

 研究開発費もフェイスブックなどの米企業は、競争力を維持するために年間数兆円を投じている。単純な「規模の利益」を追うだけでは米中の背中は遠ざかるばかりだろう。

 新会社も人工知能(AI)の開発に毎年1000億円程度を投資し、通販、決済、通信などさまざまな機能を併せ持つ「スーパーアプリ」の確立を図る方針だ。投資の桁はGAFAとは違うが、早く手を打たなければ日本国内もいずれ海外勢にのみ込まれてしまう-そんな危機感が今回の決断を後押しした。

 11月19日付毎日社説によれば、ZHDの事実上の経営権を握るソフトバンクグループ(SBG)は、今回の統合をテコにLINEの親会社、韓国ネイバーとの日韓連合でアジア進出も目指す考えだという。

 だが、新会社を事実上指揮するSBGが、このところ大型投資で相次ぎ巨額損失を出していることは気がかりだ。

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