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日産、取り組みの苦戦浮き彫りに 新経営陣に「重い宿題」

 日産自動車が発表した中間決算と通期業績予想の下方修正は、同社の業績回復に向けた取り組みが苦戦していることを浮き彫りにした。米国での“安売り”の後遺症など特有の事情に加え、自動車各社が直面する世界的な景気減速が追い打ちをかけており、経営環境は厳しさを増している。次期社長に内定した内田誠氏には、就任直後から業績回復という“重い宿題”がのしかかりそうだ。

 会見した次期最高財務責任者(CFO)、スティーブン・マー常務執行役員は「米国のリカバリー(回復)は路線に乗っている」と繰り返した。確かに、同社が示した米国での1台当たり平均売価は7月を底に上昇。販売会社の在庫も7~9月期は4~6月期と比べて2万2000台減ったという。

 米で安売り後遺症

 だが、販売奨励金の水準は競合他社と比べて依然、高水準にあるようだ。マー氏は「一貫して下げている」と強調したが、会見でも国内外のメディアから懐疑的な質問が相次いだ。レンタカー向けなど利益率の低い「フリート販売」の比率についてマー氏は「依然として高い水準にある」と認めた。米国では8月、「ヴァーサ」を全面改良し、今冬には新型「セントラ」を投入するが、いずれもセダンタイプ。需要が伸びているスポーツ用多目的車(SUV)に関しては、十分に対応できていない。

 もともと前会長、カルロス・ゴーン被告が足元の業績を上げるために、販売奨励金の積み増しやフリート販売の拡大に踏み切ったことで、米国でのブランド力が低下。西川(さいかわ)広人前社長は「ゴーン時代の負の遺産だ」と指摘していた。

 しかし、米国以外の市場も厳しい。上半期(4~9月)の販売台数は、全ての主要国・地域で前年同期を下回り、6.8%減の250万1000台。安売りの抑制で台数の伸びが期待しにくい米国を他の地域でカバーするのも難しい状況だ。

 世界景気減速の影

 日産は、1万2500人の人員削減などのリストラ策で効率化を進めようとしているが、世界の景気減速が影を落とす。マー氏は「市場や経済情勢の前提を見直している。全体需要や(日産の販売)台数見通しも下げており、そういったことも考慮に入れる」と、追加リストラの必要性に含みを持たせた。(高橋寛次)

                   

 日産の12月1日からの経営陣

 内田誠社長兼CEO(53) 日商岩井(現双日)を経て2003年日産。常務執行役員アライアンス購買担当など歴任。現職は東風汽車(中国の現地法人)総裁

 アシュワニ・グプタCOO(49) ホンダを経て06年ルノー。11年日産、「ダットサン」プロジェクト戦略担当。今年4月から三菱自動車COO

 関潤副COO(58) 1986年日産。パワートレイン生産技術本部主管などを経て2014年に東風汽車総裁。現職は業績回復への施策を担当する専務執行役員

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