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低温の地熱発電、普及へ前進 出力小規模も離島などの適地が拡大

 高温の蒸気でタービンを回す従来の地熱発電と違い、沸点が水より低い液体を利用して低温の熱源でも可能な「バイナリー方式」の地熱発電が普及しつつある。多くは出力1000キロワット以下で小規模だが、適地が格段に広がり、離島などでエネルギーの「地産地消」に貢献。ただ、開発の集中で地下の熱水の減少が懸念されるケースもある。

 「燃料の多くを島外に頼る中、電源を確保できるのは大きい」。北海道奥尻島で2017年、バイナリー方式で地熱発電を始めた「越森石油電器商会」の越森修平社長は力を込める。かつて地熱発電を目指して掘られ、蒸気の温度が低く事実上放置された調査用井戸を活用。出力は250キロワット程度だが、約200キロワット分を再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)を利用して売電し、島内に供給する。

 地熱は季節や昼夜問わず安定して発電でき、火力原子力発電技術協会によると、FITが追い風になって18年3月時点で全国の地熱発電所の数は東日本大震災前の約4倍に増加。バイナリー方式は設備規模が小さく、従来のような大規模な調査や開発を必要としない。従来立地が多かった東北や九州のほか、関東や関西の一部などにも広がった。地熱発電所数全体ではバイナリー方式が約7割を占める。

 オリックス(東京)は今年9月、北海道函館市でバイナリー方式では国内最大規模の最大出力6500キロワットを見込む発電所の建設を開始。周囲の自然環境に配慮してできる限り敷地の縮小を工夫し、22年の運転開始を目指す。

 ただ、九州の一部では、新規事業者が以前から稼働する大型発電所の近くに次々とバイナリー方式の発電所を新設。日本地熱協会は、一地域に集中すると発電に使う地下の熱水が早く減る恐れがあるとして、持続可能な開発のための法整備を求めている。

 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の西川信康地熱統括部長は「バイナリー方式は災害時に大規模な発電所が停止した際の非常電源としても期待できる。地元との共存を念頭に適正な開発が進めば、これまでなじみのなかった土地でも地熱発電の魅力を身近に感じてもらう契機になる」と話している。

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