講師のホンネ

ラグビー日本代表と日本の未来 真の多様性を目の当たりにした瞬間

 外国から新しいものを取り入れることに、何の違和感もない日本人。マカロンにタピオカ、最近はバスチーなるスペイン発祥のチーズケーキが、コンビニスイーツの最先端らしい。初詣は神社に参り、寺で法要を執り行う人間が、教会で結婚式を挙げ、盆や正月と同様にクリスマスやハロウィンを心待ちにしている。では、日本は多様性を受け入れる柔軟な国なのかというと、そうでもない。教会で式を挙げるのは結構だが、相手が外国人なのはどうもいただけないという具合に、真の多様性受け入れには拒否的だ。

 同じ服を着て、同じ科目を集団で学び、同じ基準で評価される教育。企業にはスーツ姿のサラリーマン。政治家や組織のトップは高齢男性ばかり。ダイバーシティ(人種、性別、年齢、信仰などにこだわらず多様な人材を受け入れ、彼らの能力を最大限に発揮させる)なんて、夢のまた夢だ。

 しかしながらこの日本で、うわべだけでない真の多様性の圧倒的な存在感を、目の当たりにする瞬間が訪れた。ラグビーワールドカップである。日本代表の半分は外国人選手であり、多様性ジャパンと呼ばれる。リーチ・マイケル主将はチームについて、「協調性を保ちつつ率直にものを言う人間関係が構築された」と語る。日本チームが見事に成し遂げた多様性の融合と、それがもたらした素晴らしい結果。そこに、諦めかけていた日本の未来の姿を見ずにはいられない。

 和を尊ぶ日本だからこそ、多様性を受け入れた暁には、良い意味で化ける可能性があるのではないか。協調性と個人の能力開花の歯車がうまくかみあったとき、強くて居心地の良い新しい日本社会が生まれるかもしれない。

 今や陸上・バスケットボールなどスポーツ界で躍進する選手の多くが、多様な背景の持ち主だ。能力開発やビジネスの成長を語る上でも、多様性の受け入れなしに日本の未来はあり得ない。精神科医としても多様性は重要なキーワードの一つである。容姿や育ちの違いを理由にしたイジメが減り、周りに歩調を合わせるストレスから解放されれば、精神科を必要とする人が減ることも期待できる。社会が真の多様性を実現するために、今こそ日本全体がスクラムを組むときではないか。

【プロフィル】伊豆はるか(いず・はるか) 兵庫県出身、精神科医・3児の母。慶大在学中に会社を設立し、塾や飲食店を経営。社長業の傍ら医学部入学。33歳で医師免許を取得。現在は精神科医・訪問診療医として働きながら、女性の新しい生き方を提案する「マルチライフプロジェクト」を主宰。現実的かつ具体的手法で女性を導く講座は毎回満席。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus