台風19号による千曲(ちくま)川の堤防決壊で、北陸新幹線120両が水没したJR東日本の「長野新幹線車両センター」(長野市)。かねて洪水の危険性が指摘されていた地域だったが、関西の鉄道車庫でも浸水が懸念される川沿いに立地しているケースは少なくない。車両が水没して故障すれば人々の生活への影響は計り知れず、鉄道会社の経済的損失も大きい。災害時の車両の安全確保は今後の課題となりそうだ。(江森梓)
「浸水の可能性があれば、できることは極力全てしたい」。JR東海の担当者は力を込める。
念頭にあるのは、最大で45編成計720両の新幹線が停留する「鳥飼車両基地」(大阪府摂津市)だ。淀川と安威(あい)川に囲まれ、同市のハザードマップでは、いずれかの河川が氾濫した場合に建物の1~2階が水没する1メートル以上5メートル未満の浸水の危険性のあるエリアに位置している。
国鉄時代の昭和42年7月に台風が襲来した際には、安威川が氾濫危険水位に達したため基地より数十メートル高い本線に車両を退避させたこともある。
今回浸水のあった長野新幹線車両センターも千曲川西岸から1キロの場所にあり、長野市のハザードマップでは付近は最大10メートル以上の浸水が予想されていた。
1両当たり3億円程度の製造費がかかるとされる北陸新幹線は、今回の水没で大幅な機器交換などが必須で、JR東の年内の正常ダイヤでの運行は困難な見通しだ。
もともとリスクの低い場所に立地していればいいのだが、車両基地は広大な土地を要するがゆえに、安全性を最優先に場所を確保するのは難しいという側面もある。鉄道ジャーナリストの梅原淳さんは「川沿いだったり埋め立て地だったりと、浸水が懸念される場所に建てられているケースが少なくない」と指摘する。