台風15号でアクセス手段の交通機関が運休するなどし、「陸の孤島」と化した成田空港。ロビーは足の踏み場もないほどの人であふれたが、こうした事態を回避する術はなかったのか。「災害大国」日本で開催される東京五輪まで1年を切った。海外からの玄関口となる成田空港の混乱回避には、選択肢として着陸地を変更する「ダイバート」の積極的な実施も浮かび、専門家は官民一体での取り組みを訴える。
陸の孤島
台風が関東を通過した9月9日午前、成田空港は滑走路の運用を再開した。
だが、空港と東京都心を結ぶJRの路線は設備の損傷や倒木などで、成田エクスプレスを含め終日運休。京成線は同日夕に運行を再開したが本数は限られた。
空港に通じる高速道路も一時通行止めとなった上、周辺の一般道も停電などの影響で大混雑。高速バスも運休を強いられ、成田空港は陸の孤島と化した。
一方で滑走路が再開されたため、到着便は次々と着陸したが、出発便は陸の交通機関の乱れなどで、地上スタッフが出勤できず、欠航が生じた。
この結果、到着しても空港を出られない人や、欠航便に乗る予定だった人で空港はあふれた。成田国際空港会社(NAA)によると、3つのターミナルに足止めされたのは、最大計約1万3300人に上った。
想定外の交通乱れ
日本航空は台風15号に備え、8日夜から空港近くのホテルに地上スタッフらを宿泊待機させるなどしていたが、それでも人手不足が生じた。NAAの担当者も「予想以上に交通機関の再開が長引いた」と訴える。
利用者の不安解消にNAAは日本語や英語、中国語の3カ国語で公共交通機関の運休を伝達。さらに、空港に足止めされた利用客らに、水やクラッカー、寝袋を各2万個前後配布し、その案内も随時流した。