中小企業へのエール

正座と座椅子 「高齢化」ビジネスに技術開発の出番

 今回は、「高齢化」がビジネスにとって、どのような具体的影響があるかを考えたい。日本の中小企業、特に小規模事業者向け補助金の中に「小規模事業者持続化補助金」というのがある。事業を続けるかどうか迷っている事業者に持続継続させるため、原則50万円を上限に少し後押しする補助金で、私が制度設計などに深く関わった思い出深い補助金の一つである。(旭川大学客員教授・増山壽一)

 50万円の使い方は各種各様であるが、ホームページ作成、トイレの改修を行ったことにより見違えるような売り上げアップを成し遂げる成功例が多く報告されている。

 ホームページに動画やイラストを入れたり、また英語、中国語の表示を加えたら注文が遠方や海外からも急増したりしたという例や、トイレを洋式仕様にしかも各国の音楽メロディー付きにしたところ大好評という例も多い。

 そんな中で、私が最近注目している例が「畳座敷の改装」である。

 座敷は、世界的に見ても多くの人が座れる機能的な空間だ。私も小さいときには、長い時間正座をして足がしびれて困った経験が何度もある。そして、座敷で食事をするのも当たり前であった。正座ができないのは外国人だけで、日本人なら座敷に座るのは当たり前、というそんな時代もあった。

 しかし、今、日本人は正座ができない傾向にある。正座を子供たちのしつけに教えていた世代が高齢化して、座敷を嫌うようになっているためだ。地方での法事、お寺でのお勤めも座椅子がなければ成り立たないのである。

 そんな中で、座敷を板の間にするとか、座敷にテーブル・ソファを入れるというような改装が全国で進んでいる。

 先日、地方の町長・議長の方々と円座を囲んでの議論をするイベントを企画したところ、皆さんが口をそろえて「椅子にしてください」と言われて、改めてこのことを実感したのである。

 ただ、日本人として座敷に座る文化も捨てがたい。そんなときには技術開発の出番である電動可変式座布団など誰か開発してくれないものか。しかも補助予算50万円以内で10脚くらい用意できると、すぐにでも大きな反響があると思うのであるが。いかがなものか。

【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。旭川大学客員教授。京都先端科学大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。環境省特別参与。著書「AI(愛)ある自頭を持つ!」(産経新聞出版)。57歳。

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