ダイバーシティという言葉が日本でも広がってきている。ダイバーシティとは、「多様性」を意味している。これは1990年代アメリカで広まった。多種多様な、人種、宗教、思想、性別、年代などの人材を幅広く受け入れ、積極的に活用していこうという考え方だ。
人種のるつぼであるアメリカでは、優秀な人材の登用において重要視され急速に認知されていったが、当時の日本では、あまり必然性がなかった。ところが、あれから約30年。日本の環境は一変した。インバウンドの急増、少子高齢化による若手人材の不足、「ゆとり世代・さとり世代」のマネジメント、働き方改革。今、日本の企業や人材も、いよいよ本格的にダイバーシティ化を求められていると感じる。
現在、僕が経営する会社には、合計150人ほどの、日本人、フィリピン人、サウジアラビア人、中国人、台湾人と5カ国・地域のスタッフがいる。年齢も、下は18歳から上は72歳と幅広く、LGBT(性的少数者)を公言している従業員も多い。多様な人材を抱える会社の立ち上げ当初は多くの失敗をした。例えば、外国人スタッフに日本での常識を押し付けてもうまくマネジメントできない。逆に他国の常識を丸ごと尊重して受け入れても成果が出ない。そんな環境下で、自然とダイバーシティマネジメントを学んでいった。
実感したことは、ダイバーシティ企業として成長していくために最も必要なことは2点。1つ目は、まずは知ること。異なる文化を知る。そのためには海外へ出ること、今の自分の世界の外に飛び出してみることは大きな経験となり、他者を尊重することへとつながる。
2つ目は、今一度「企業が大切にしている理念やビジョン」を確立し、開示、浸透させる。会社の理念をスタッフに求めた上で、個々の考え方を尊重する。
このバランス感覚がとても大切。どちらかだけ、しかも一方的では成功は難しい。日本の企業においても、世代の離れた人材、LGBT人材、外国人人材と接する機会は増加の傾向にある。その際に、どのようなバックグラウンドを持つ人にも通じる、「知ること」「伝えること」「尊重すること」を実践することで、必ず強いグローバル組織が創り上げられていくと信じている。
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【プロフィル】早川諒
はやかわ・りょう 1983年、東京都生まれ。「セブ島0円留学」を運営するAHGSの代表を務める。日本、セブ、オーストラリアにて事業展開し、「日本人留学生向け英語学校」「フィリピン人向け日本語学校」「BPOセンター」などを運営する。学校教育を通して次世代のグローバル人材と、ダイバーシティ人材の育成と輩出を行っている。