金融

違反底なし、郵政ブランド失墜 経営陣、深刻さ理解せず対応後手

 ゆうちょ銀行の高齢者向け投資信託販売で、本来必要な手続きを怠った不適切な契約が多数判明した。保険の不正販売が横行していたかんぽ生命保険と根は同じで、社内規定に違反する営業手法は底なしの様相だ。問題発覚後の対応も後手に回り、日本郵政ブランドの信用は地に落ちた。

 経営陣の対応は最初から手ぬるかった。問題が表面化した6月下旬、かんぽ生命やゆうちょ銀の親会社である日本郵政の長門正貢社長は、かんぽ問題について「『不適切』の定義による。顧客は同意している」と述べ、事態の深刻さを理解していない様子だった。

 その後、かんぽ商品で顧客への不利益が疑われる契約が約18万3000件に上ることが判明。7月下旬の記者会見では「今から思うと認識が十分でなかった。(調査で)数字が増えてきて認識が改まった」と、これまでの対応を釈明した。

 投信の不適切販売も、違反行為が蔓延(まんえん)していた事実を経営陣が把握できていなかった点で構図は同じだ。ゆうちょ銀は「(契約を結んだ高齢者に)投信の商品内容を理解してもらえているかフォローする。手続きに瑕疵(かし)があったのでもう一度確認する」(担当者)と説明しているが、遅きに失した感は否めない。

 郵政グループに対する政府の視線は厳しい。11日の内閣改造で総務相に再登板した高市早苗氏は翌日の記者会見で「腹に据えかねている。契約者に不利益を生じさせ、本当に残念だ」と憤りを隠さなかった。

 内閣改造と同じ11日には、監督官庁の金融庁が、かんぽ生命と日本郵便への立ち入り検査に着手した。今後数カ月かけて日本郵政も含めた経営層から状況を聴取し、不正の根本原因を究明する。厳しい処分は不可避の情勢だ。

 ゆうちょ銀が13日時点で不適切と認めた1万9591件の投信契約は、これまでに調査を済ませた2018年度分にすぎない。かんぽ生命の保険についても3000万件の全契約の確認作業を進めており、不利益契約件数がさらに膨らむ可能性がある。

 全容解明には程遠い状況だが、郵政グループは今年末をめどに社内調査を終了する方針を既に決めている。弁護士らでつくる特別調査委員会に対しても12月末までの調査報告を要請しており、早期の幕引きを図りたい思惑が透けて見える。

 内情を知る関係者は、グループの経営幹部が「必要な対策は打っていた」と弁明していることを明かし「責任逃れをしているようだ」と吐き捨てるように言った。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus