アフリカでスタートアップビジネスが盛んだ。インフラや教育、医療制度の不備を穴埋めする斬新なアイデアで、難題を「ビジネスチャンス」と捉える若者が起業、日本企業の出資も相次ぐ。8月下旬に横浜市で開かれるアフリカ開発会議(TICAD)の主要テーマの一つだ。ビジネスを通じアフリカの諸問題を解決する一助となれるかどうかに注目が集まっている。
遠隔で教育格差解消
トタン板の小屋が密集し、広大なごみ捨て場では再利用できる廃棄物を住民が回収している。ケニアの首都ナイロビ郊外のスラム。劣悪な住環境で、女子生徒、ジョアニーナ・ワンジクさん(15)が携帯電話を片手に勉強に打ち込んでいる。
ショートメッセージサービス(SMS)で送られてきた択一式の問題に答えを返信。人工知能(AI)が分析、本人に適した問題や学習のアドバイスを提供する。エムシューレ社が2017年にケニアで始めた遠隔地、貧困層向けサービスだ。月額90シリング(約90円)で利用者は約9000人に上る。
ジョアニーナさんの学校は1クラスに生徒が約60人いる。授業は一方通行で、ついていけず落第する子も。教科書は数人で使い回し、自習のために家に持ち帰ることができない。ジョアニーナさんはエムシューレのサービスで「自分の学力に合った勉強ができるようになり楽しい。数学の成績がものすごく伸びた」と笑顔だ。
ケニアでは多くの家庭で携帯が普及し、携帯で料金を支払うモバイルマネーも発達。エムシューレを起業した米国人女性、クレア・マンジョさん(30)は「最新技術を使えば子供の能力を伸ばし、富裕層と貧困層の(教育機会の)差を埋められる」と意気込む。
暗号資産(仮想通貨)を介した送金、衛星利用測位システム(GPS)による救急車の手配-。ケニアやナイジェリア、南アフリカを中心に、ここ数年で現地人や欧米人の起業が相次ぐ。
日本の商社も参入
民間投資会社によると、アフリカの起業家が世界中の投資家などから集めた資金は18年、計10億ドル(約1000億円)を突破。起業支援のセミナーを開いたり共用の作業スペースを提供したりする施設もアフリカ全体で400カ所ほどある。
日本の商社の参入も目立つ。豊田通商の子会社は配送手段がない顧客と空荷のトラックやバイクの運転手をアプリでつなぐセンディ社に、三井物産は電気がない村の家庭にソーラーパネルを割賦販売するエムコパ社にそれぞれ出資する。
日本貿易振興機構(ジェトロ)はサポート窓口を設け、TICADでもイベントを開き進出を後押し。ナイロビ事務所の直江敦彦所長は「アフリカの課題を従来の援助ではなく、ビジネスで解決しようとしている。事業が周辺国に広がる可能性もある」と指摘した。(ナイロビ 共同)