金融

かんぽ生命経営陣 投資家の不利益増大で経営責任も

 かんぽ生命保険の不適切販売問題をめぐり、日本郵政がかんぽ生命株を国内外の投資家に売却した4月時点で、かんぽ生命の経営陣が不適切な事案を把握していたことが29日、分かった。同日開かれた政府の郵政民営化委員会の会合で、かんぽ生命幹部が報告した。重大な経営問題につながる事案を認識しながら株を売り出し、投資家の不利益を増大させた恐れがあり、経営責任が問われそうだ。

 29日の民営化委では、不適切販売問題について委員が郵政グループ幹部に聞き取りを実施。同委の岩田一政委員長は会合後に記者会見し、かんぽ生命幹部から「4月の段階で個別の(不適切な事案についての)苦情はある程度把握していた」と報告を受けたことを明かした。事案の規模がどの程度かは把握していなかったという。

 今月10日の記者会見で、かんぽ生命の植平光彦社長は「不利益が発生している状況は直近の調査で判明した」と説明していた。

 郵政民営化法では日本郵政は保有するかんぽ生命株をすべて売却することを目指すと定められている。平成27年にゆうちょ銀行を含めたグループ3社が上場した際に、日本郵政は100%保有していたかんぽ生命株の11%分を売り出し、今年4月の2次売却では89%の保有株を64%程度まで引き下げた。

 2次売却の売り出し価格は1株2375円だったが、その後不適切販売問題が深刻化してかんぽ生命の株価は下落。今月29日の終値は1797円だった。経営陣が問題を把握しながら株式を売り出したのであれば、株主から損害賠償を求める訴訟も起こりかねない。

 岩田委員長は29日の会見で「契約者に不利益が生じたような事案があった場合は速やかに公表すべきで、透明性が極めて重要だ」と述べ、日本郵政グループの対応を問題視。また、「マーケットが評価しない経営には問題がある」と経営責任にも言及した。

 31日に開催される日本郵政の長門正貢社長らの会見では、かんぽ生命株の2次売却の適正性や経営責任が大きな焦点になる。

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