高論卓説

ファーウェイ機器の禁輸 5G特許多数保持、対応悩ましい日本勢 (2/2ページ)

 もっとも、ファーウェイからすれば、特許管理会社「パテント・トロール(特許の妖怪)」などの企業に特許を譲渡し、そのトロールに権利行使させるという手もあるから、功を奏さないように思える。

 他方で、日本でも三大通信キャリアに加え、楽天も5Gの通信キャリアとしてのビジネスを実施することが発表されている。これらの会社の一部は、当初ファーウェイの基地局を利用すると予想されていたが、米国の影響により、とりやめる可能性がある。

 しかし、日本で米国にならってファーウェイ製品の採用をやめれば、それこそファーウェイから特許のカウンターが各事業者に飛んでくるであろう。ファーウェイは、日本でビジネスができないのであれば、それこそ怖いものなしだ。

 かといって、日本で米国のように特許侵害などの救済措置を禁止できるかといったら、各企業が単にファーウェイの製品の使用を自粛しているだけの状況では、救済措置を禁じる法律を制定する理由がないため難しいだろう。

 また、日本の通信事業者がファーウェイの権利行使に対して特許的に何か防御措置を講じられるかというと、極めて難しいであろう。ファーウェイは日本でも多数の特許を保有しており、そのうち5Gに関する特許がどの程度あるかは調査していないが、それでもその全てを無効にするのは困難であろう。

 やれることがあるとすれば、ファーウェイ製品の採用を中止するのかしないのかという判断に当たって、特許リスクを精査することである。その上で事業判断に踏み込むべきである。また、ライセンス料を支払わなければならないとなると、最終的にユーザーの通信料金に反映されることになるであろう。ファーウェイの問題は、実はわれわれ国民生活と切っても切り離せない問題なのである。

【プロフィル】溝田宗司

 みぞた・そうじ 弁護士・弁理士。阪大法科大学院修了。2002年日立製作所入社。知的財産部で知財業務全般に従事。11年に内田・鮫島法律事務所に入所し、数多くの知財訴訟を担当した。19年2月、MASSパートナーズ法律事務所を設立。知財関係のコラム・論文を多数執筆している。大阪府出身。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus