アキュラホーム執行役員・滝川健司さんに聞く
--注文住宅メーカーが木製ストローを開発した
「きっかけは2018年の西日本豪雨。山崩れで発生した木材の使用方法について環境分野の識者から連絡をいただき、プラスチックごみの海洋汚染問題にも寄与するので、木でストローを作ってはどうかという提案をいただいた。社会貢献活動の一つになるということで社長の承諾も得られ、プロジェクトが昨秋に立ち上がった」
--プロジェクトはどう進んだのか
「最初は2センチ角の木材に穴を開けて作ったが、太すぎて口の隙間から飲み物が漏れた。次に角材の外側を削って細くしたが、手間がかかる上に強度に問題が出たので発想を変えた。木を薄く削った名刺があるが、同じ要領で削ると角度によってはくるっとストロー状に丸まる。この発想が出てから、開発が進んでいった」
--ザ・キャピトルホテル東急で1月から導入された
「最初は販売まで気が回らずに作ることに集中していたが、当社が開発しているのを先方が聞きつけて、『ぜひ導入したい』とお声がけいただいた。巡り合わせで海洋プラごみ問題が話題になり、大手外食がプラストローを廃止するとの発表も重なって、量産に向けて協力してもらえる企業も出てきた」
--今後、木製ストローをどう広げていくか
「20カ国・地域首脳会議(G20サミット)でも紹介されて、注目度も高まった。現状では年間6万本程度の製造量だが、5年後には31億本にしたい。世界で使われているストローの約1%に当たる量として当社で試算した。木のストローならば可燃ごみとして処理したとしても、プラ製より年間6200トンのCO2排出削減につながる。これはガソリン車で地球を558周したときの排出量だ。いずれは洗って何度も使えるようにして、箸のように『マイストロー』を持ち歩く習慣が根付くといい」
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【プロフィル】滝川健司
たきがわ・けんじ 慶大卒。大手運輸に勤務した後、2015年7月アキュラホーム。同社では建築部門担当部長などを経て、18年3月から現職。木製ストローのプロジェクトでは責任者を務めた。東京都出身。