埼玉発 輝く

新札効果 渋沢栄一のうどん好調 新吉 (1/2ページ)

 一万円札の新しい肖像に決まった渋沢栄一(1840~1931年)の出身地、埼玉県深谷市の「新吉」は周辺地域の学校給食を一手に引き受けるなど、地域の最前線で活躍する製麺会社だ。渋沢の残した足跡を地元の活性化につなげようと、深谷市はさまざまな取り組み始めている。その一つが同社の開発した「シルクうどん」などの新商品。渋沢栄一の功績にちなみ、発売と同時に早くも好調な売れ行きをみせている。

 煮ぼうとう名物に

 同社は、ゆで麺や生麺を中心に年間150種類を製造、関東甲信越と静岡の1都10県に麺を卸し、年商約11億円を誇る。

 関東の広範囲に商品を届ける一方、地域に根付いた仕事にも取り組んでいる。県内で8社しかない給食業者のうちの1社として、県北部の小中学校約200校に麺を供給する。「一校一校に対応するのは大変。過疎の学校にも届けなければならない」と語る通り、配送体制が強い企業でなければできない。「うちがやめたら田舎の給食は全滅してしまう。がんばって続けたい」という。

 同社は「煮ぼうとう」を深谷名物にした。煮ぼうとうは名産のネギなどの野菜と幅広の麺を煮込んだ料理。深谷では家庭料理として、「ほうとう」を食べる文化があった。もっとも、「あくまでも家庭の味で、店で出すようなものではなかった」(小内睦夫社長)。それが小内社長の母、政さんの「おいしいし、特徴があるのだから、出せば売れる」という判断で、1988年に商品化に踏み切った。

 発売すると、あっという間に社を代表する商品となり、2000年には、地元で「武州煮ぼうとう研究会」も発足した。山梨との「ほうとう対決」などの取り組みもあって、深谷のほうとう文化は盛り上がり、飲食店のメニューに煮ぼうとうも名を連ねるなど、名物としてのブランディングに成功した。

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