金融

2000万円どうする…金融機関「長寿商品」拡充 NISA堅調、生涯続く年金も

 95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要とした金融庁金融審議会の報告書では一部の書きぶりが問題視されている。ただ、「長寿化でこれまで以上に多くのお金が必要となる」という指摘は事実で、金融機関も長寿化を意識した商品の拡充に努めている。今回の問題は金融庁の不手際が原因だが、老後の資金に関心が集まることは各社の追い風になりそうだ。

 「資産形成を助ける商品の営業をする上で、話を向けやすくなったのは事実」。ある大手銀行の営業担当者はそう語る。報告書をめぐる報道をきっかけに不安を感じ、相談に来る人も少なくないという。監督官庁のミスがきっかけのため各社とも大々的な宣伝は控えているが、一連の問題は商機となっているのだ。

 特に低金利環境が続き、預金では十分な資産形成が望めない中、投資初心者でも始めやすい「少額投資非課税制度(NISA、ニーサ)」や個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」は、今後も利用者の増加が見込まれている。運用益に税金がかからないこともあり、NISAは昨年12月末時点で1246万口座に達し、iDeCoも今年4月末で加入者が123万人と、いずれも増加傾向が続いている。

 今後、話題となりそうなのは「トンチン年金」と呼ばれる保険商品だ。一定の年齢に達する前に死亡すれば元本割れするが、生きている間は一定額がずっと受け取れるのが特徴で、老後の資金が枯渇するといった心配がなくなる。数年前から一部の大手生命保険が提供を始めており、第一生命保険の担当者は「まさに長生きに備えた保険で、豊かな老後を送りたい人に好評だ」と語る。

 他にも健康に不安のある高齢者でも入れる生命保険や、介護や認知症に特化した保険を売り出すなど、各社が工夫を凝らした商品を展開している。また、野村ホールディングスと慶応大などは4月に「日本金融ジェロントロジー協会」を設置。金融と高齢化に関し専門的な知見を備えた社員を育成するための取り組みも進められている。

(蕎麦谷里志)

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