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EV時代「待った」トヨタの深謀 HV関連特許を無償公開、“世界の標準化”を図る (3/4ページ)

 まずは、コストダウンによる収益改善だ。多くの自動車メーカーがトヨタ方式のHVを生産・販売するようになれば、システムに組み込まれる部品の生産量が膨らみ、コストが下がる。モーターやPCUなどの基幹部品は、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)でも応用可能で、電動車全般の生産でメリットがありそうだ。

 寺師氏は「電動化技術はこの先10年がヤマ場だ」と指摘した。会見の資料には、30年までの欧州での環境規制が記載してあり、車両の重量ごとに許容される走行距離1キロ当たりのCO2排出量を示すグラフは20、25、30年と段階的に厳しくなることを示していた。

 寺師氏は「これが目標となり、近い規制値が世界に広がっていく」との見通しも述べた。その厳しさは、例えば25年の規制は「(販売する車両を)全部プリウスにしてようやく乗り越えられる」(寺師氏)水準という。自動車各社は世界で対応を迫られることになる。

 寺師氏は30年の世界販売に占めるEVの比率に関し、「部品メーカーや自動車メーカーなどから話を聞いていると、20%前後というところだ」と打ち明けた。そして、「エンジン車を全部HVに置き換えれば、(その分、CO2を削減できるため)規制対応で20%必要なEVの比率を10%にすることができる」と話した。

 系列構造の維持

 ここに、トヨタの本当の狙いが浮かび上がる。それは、HVをEVの追随を許さないエコカーの“世界標準”として広く普及させることだ。言い換えると、HV時代を盛り上げ、いつかは来るとされるEV時代の到来を、できるだけ遅らせることにほかならない。「30年で10%」なら、EV時代はそれより後ということになるが、その頃はトヨタが得意とするFCVが普及する環境も整っている可能性がある。

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