東京・渋谷駅周辺の大型書店3店が、防犯カメラと人工知能(AI)による顔認識技術を使い万引を抑止するシステムの共同運用で最終調整していることが5日までに分かった。読書離れやインターネット通販の台頭による経営の苦境に万引被害が拍車を掛けており、対策を強化する。実証実験から始め、NPO法人の全国万引犯罪防止機構(東京)と協力して段階的に全国に広げたい考えだ。
小売業界で防犯や顧客分析への顔認識技術の利用が増えているが、系列の異なる店舗が共同でシステムを運用するのは異例。関係者によると、参加するのは全国チェーン大手と東京の私鉄系書店、渋谷が地元の大手書店。警察当局も支援する。
システムは過去の万引犯、不審な動きを繰り返した人などの顔の情報を共同のデータベースに登録。店舗の防犯カメラが来店客の顔の特徴を抽出し、登録データと照合する。一致した場合、店員や警備係のスマートフォンなどに通知して警戒を促す仕組みで、判別精度は約99%という。
実証実験を通じ、顔データの新規登録や登録抹消の基準、情報管理の在り方などで指針を策定し、事実上の業界標準モデルをつくる方針。顔データはそれぞれのグループの他店と共有せず、3店だけにとどめる。
万引犯の誤判定や誤登録といったプライバシー保護の観点からのリスクもあり、慎重な運用が求められそうだ。3店は正式に合意すれば、ホームページなどで顧客に告知する。
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【用語解説】顔認識技術
画像から個人の顔の特徴を分析し、データベース上の既存の顔情報と照合して特定する技術。深層学習といった人工知能(AI)技術の向上に加え、利用できる顔のデジタル画像が蓄積したことで近年、飛躍的に進化した。世界で開発競争が激化しており、中国ではセンスタイムなどの新興企業が台頭。米国のアマゾン・ウェブ・サービスは格安な料金体系で提供している。