【スタートアップの旗手】レイ・フロンティア 田村建士社長


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 ■AI位置情報分析、海外で展開

 人工知能(AI)による位置情報の分析プラットフォームを開発、販売するレイ・フロンティア(東京都台東区)は、海外進出を本格化させる。三井物産と資本業務提携し、ITエンジニアを補強して新サービスの開発にも取り組む。

 プラットフォームは、位置情報を収集するための部品「Silentlog(サイレントログ) SDK」と、収集したデータを分析する部品「Silentlog Analytics(アナリテックス)」から構成される。

 顧客企業は、自社の提供するアプリにSDKを組み込むだけで、利用者の位置情報の収集が可能となる。さらにアナリテックスが歩数、距離、時間、滞在場所、移動手段など、利用者個人の行動データをAIで分析・可視化する。

 田村建士社長は「個人の行動の足跡(ログ)を日記のように記録し、このデータを分析することでどのような行動・思考パターンを持つのか仮説が立てられる」という。

 2016年10月から、位置情報データを活用したサービスを始めたい法人向けにプラットフォームの販売を開始。イードが運営する車の燃費情報などを管理するウェブサイト「e燃費」や、キムラユニティーの法人向けクラウド型車両管理システム「くるまぷり」などに採用されている。

 今年2月には、三井物産を引受先とする第三者割当増資により3億円を調達。利用者の行動分析のサービスや、混雑緩和、複数交通機関の連携などのモビリティーサービスを軸に投資する。既にタイの日系企業から請け負ったほか、現在、数カ国での事業展開を検討している。

 レイ・フロンティアの強みは、バッテリーの消費量を節約できる技術だ。スマートフォンの電力消費量を極力抑えながら、衛星利用測位システム(GPS)やジャイロセンサー(角速度センサー)のデータを効率よく取得できるように調整する。プラットフォーム導入に伴う1日当たりの電力消費量は、スマホ全体の1~3%と少量に抑えた。

 海外では、ベルギーやイスラエルなどの先進的な企業が、モバイル端末から収集した位置情報を活用するビジネスを確立しつつある。田村氏は「位置情報という世界共通のデータを基軸にして、日本から仮想と現実をつなげる世界一のサービスをつくりたい」と話している。

【プロフィル】田村建士

 たむら・けんし 2002年、川田テクノシステム(現川田テクノロジーズ)に橋梁エンジニアとして入社。11年から現職。40歳。岩手県出身。