トヨタ自動車がハイブリッド車(HV)など電動車の関連技術の特許を無償開放する背景には、次世代エコカー市場をめぐる覇権争いの激化がある。電気自動車(EV)や水素で走る燃料電池車(FCV)は成長市場に大化けする可能性を秘めるが、トヨタには存在感拡大への危機感もあり、特許のオープン戦略で電動車全体の競争力向上を狙っているようだ。
「トヨタの取り組みがきっかけとなって各社の電動車開発が加速され、二酸化炭素(CO2)排出量の削減スピードが速まることを期待したい」。トヨタの寺師茂樹副社長は3日の記者会見で、こう強調した。
トヨタはHVの先駆者としてエコカー市場の育成をリードしてきた。平成9年に世界初の量産車「プリウス」を発表して以来の世界累計販売台数は昨年12月末までで1300万台に到達。その間にモーターはじめ電動化に必要な技術のノウハウを蓄積し、自社でHV技術を囲い込んできた。
しかしトヨタには現状のままでは世界最大のEV市場に躍り出た中国を含め、次世代車市場で存在感を高められないとの危機感もあるようだ。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一シニアアナリストは「トヨタがHV関連部材の外販も手掛け、需要が増えれば、中長期的には電動車の製造で年間1000億円超というコスト削減効果を得られる」と試算。特許開放には、仲間づくりでコスト競争力を高める狙いもあると分析している。