解散した健保の加入者は協会けんぽに移るため、医療保険が使えなくなるわけではない。しかし健保の経営状態の悪化や解散について、健保連は「現在の日本の医療保険制度が立ちゆかなくなりつつあることの表れ」と危惧している。
高齢者支援が重荷に
健保が窮地に追い込まれている背景には、健保に加入していない高齢者の医療を支援するため、巨額の負担を求められているという事情がある。健保が29年度に支払った経費のうち、約3兆5千億円は高齢者支援のための拠出金で、加入者のための医療費支払額の約4兆円に迫っている。個別の健保でみれば、高齢者支援のための拠出金が加入者のための支払いを上回っている組合も多い。
健保連によると、健保の経営悪化が進んだきっかけは、20年度に政府が高齢者の医療費を支える仕組みを見直したことだ。
政府は20年4月に75歳以上が加盟する後期高齢者医療制度を設立。あわせて65~74歳(前期高齢者)の加入割合が多い国民健康保険の負担を軽減するための仕組みも導入した。こうした仕組みによる29年度の健保全体での拠出金額は制度導入前(19年度)の約1.5倍となっている。
これらの拠出金の負担は国からの請求書が回されるようにして各健保に割り振られる。健保連の田河氏は「現役世代からみれば、拠出金負担は非常に厳しい」と話す。
知らないうちに負担増
こうした拠出金の増加は健保の保険料の値上げにつながっている。加入者の収入に占める保険料(事業者負担分を含む)の割合を示す保険料率は、健保連加盟組合平均で、29年度は約9.2%。10年前の約7.3%から大きく増加した。一人当たりの年間保険料額でみても29年度の約49万円は、10年前から10万円も増えている。
健保の保険料率は個別の健保が財政状態などを考慮したうえで決める。しかし、多くの会社員は「知らない間に保険料率が上がっていた」というのが実情だろう。