試乗スケッチ

新型BMW3シリーズ、大型化はネガティブ要素か? 安易な判断は禁物 (3/3ページ)

木下隆之
木下隆之

 しかも、重心点は100mm低下。レーシングマシンが低いことからも想像できるように、重心点低下によってコーナリングでの安定感が高まる。

 前後重量配分は50:50を実現している。スポーツセダンとしては理想的な数値をキープしている。ドライバーを中心に、クルリと旋回しやすくなっている。

 55kgものダイエットにも成功している。大きくなってはいるもの、それは肥満ではなく筋肉質になった。

 サスペンションも素晴らしい。電子制御アクティブサスはハードな走行に耐える。試乗車は2インチアップのタイヤを装着していたこともあり、乗り心地はかなり締め上げられている。走り優先なのだ。

 Mスポーツデファレンシャルは、シャープなコーナリングを生み出す装置だ。ハンドル操作に鋭く反応し、グイグイとコーナーに切り込んでいく。胸のすく思いがした。

 僕は新型3シリーズに、世界屈指のアスリートとイメージを重ねてしまった。食事制限で減量するのではなく、厳しいトレーニングによって増えた筋肉量以上に脂肪をそぎ落とし、バランスのいい筋肉質なボディを得たように感じるのだ。腹筋がパキパキに割れたアスリートを想像した。

 さすが1500万台を生産し続けてきたBMWの主力車種のことだけある。BMWは一切の手を抜かなかったばかりか、これからもベンチマークであり続けるつもりなのだ。

 【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちらから。

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木下隆之(きのした・たかゆき)
木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

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