しかも、重心点は100mm低下。レーシングマシンが低いことからも想像できるように、重心点低下によってコーナリングでの安定感が高まる。
前後重量配分は50:50を実現している。スポーツセダンとしては理想的な数値をキープしている。ドライバーを中心に、クルリと旋回しやすくなっている。
55kgものダイエットにも成功している。大きくなってはいるもの、それは肥満ではなく筋肉質になった。
サスペンションも素晴らしい。電子制御アクティブサスはハードな走行に耐える。試乗車は2インチアップのタイヤを装着していたこともあり、乗り心地はかなり締め上げられている。走り優先なのだ。
Mスポーツデファレンシャルは、シャープなコーナリングを生み出す装置だ。ハンドル操作に鋭く反応し、グイグイとコーナーに切り込んでいく。胸のすく思いがした。
僕は新型3シリーズに、世界屈指のアスリートとイメージを重ねてしまった。食事制限で減量するのではなく、厳しいトレーニングによって増えた筋肉量以上に脂肪をそぎ落とし、バランスのいい筋肉質なボディを得たように感じるのだ。腹筋がパキパキに割れたアスリートを想像した。
さすが1500万台を生産し続けてきたBMWの主力車種のことだけある。BMWは一切の手を抜かなかったばかりか、これからもベンチマークであり続けるつもりなのだ。
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【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちらから。
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