日本の大企業同士の敵対的TOB(株式公開買い付け)が成立することは珍しいと聞く。だから伊藤忠商事によるスポーツ用品大手、デサントに対するTOBが注目を浴び、大きく報道されたのである。
なぜ、この時期でのTOBだったのか。15日付の本紙によれば、「国際情勢の変化」と「2020年の東京五輪・パラリンピック、22年北京冬季五輪・パラリンピックという商機」に起因しているのだそうだ。
東京五輪・パラ商機
デサントの最終利益の多くは韓国市場に頼る。昨年冬の平昌大会での活発な展開に目を見張った。ただ街中や主会場近くの店舗に日本人スタッフの影はなく、韓国人スタッフばかり。デサントを韓国企業と信じて疑わない買い物客に驚かされた。
筆頭株主の伊藤忠はこうしたデサントの韓国偏重を問題視した。日韓関係は過去最悪であり、日本製品不買運動が起きかねない情勢にある。加えて、日本と中国で相次ぎオリンピック・パラリンピックが開催される機会に、韓国重視は心もとないと考えても不思議ではない。
今後は伊藤忠の主導で経営戦略が進んでいくのだろう。同社の株式保有率2位の中国企業、ANTA(アンタ、安踏体育用品グループ)の賛同も得て、中国市場への進出が加速するのか。
スポーツ用品メーカーにとって、とりわけオリンピックは最大の商機である。メダル獲得が有望視される選手や代表チームがどんなユニホームを着て、シューズを履くのか。世界一流の選手たちがどんな用具を使っているのか。映像となって世界各地に瞬く間に発信される。その活躍は、スポーツ用品各メーカーの売り上げを大きく左右するといっても過言ではない。
現在、世界のスポーツ用品市場をリードするのは米ナイキと独アディダスである。アディダスは長らく国際オリンピック委員会(IOC)のスポンサーとしてオリンピックに君臨した。ナイキは地元米国を基点として、代表チームや選手に狙いを定めて市場を拡大してきた。
現在、世界規模で見た場合、1位のナイキは17年12月期の連結売上高は363億9700万ドル、日本円換算では約3兆9309億円規模である。これをアディダスがグループ連結売上高約2兆8644億円規模で追いかけている。
近年、不動の1、2位に比して3位以下は大混戦となって久しい。独プーマ、米アンダーアーマーと日本のアシックスが激しくシェアを争い、米ニューバランスが上位をうかがう。
ちなみに17年12月期では、プーマの連結売上高5582億円に対してアンダーアーマーが5573億円。アシックスは4001億円だった。
アシックスは20年東京大会のゴールドスポンサーである。強さを誇るシューズ部門に加え、オリンピックの発信力を利用した国内外市場の開拓でアンダーアーマー、プーマに迫りたい。