【日本の未来を考える】カード情報利用どこまで 学習院大教授・伊藤元重 (1/2ページ)

伊藤元重・学習院大学教授(野村成次撮影)
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 キャッシュレス決済を進めていくことが政策課題となっている。キャッシュを使わないことで、小売業などへのコスト負担が軽減される。スマートフォンやカード、指紋などの生体認証を利用して支払いをすますことが近未来の姿であるだろう。

 ただ、キャッシュレスにも問題がないわけではない。中国で幅広く活用されているアリペイでは、利用者の情報が事業者に吸収される。政府にもそうした情報が吸収されるともいわれる。具体的な実態は分からないが、個人の情報を吸い上げることが、サービスを提供する企業にとっても、国民を管理したい国家にとっても都合がよい。真偽のほどは定かではないが、アリペイの利用者は、過去の購買行動などによって、ランク付けがされているといわれている。単純化していえば、その人の評価は70点というような指標をつくることが可能だ。評価の高い人ほど優遇される。中国からの旅行者のビザの認可にこの評価点数を利用する国もある、というようなことを情報問題の専門家から聞いたこともある。

 利用実態から自分たちの情報が吸収されたり、勝手に評価されるというのはあまり気持ちのよいものではない。ただ、私たちが日常的に利用しているクレジットカードでも、基本は同じだ。カード会社や金融機関がその気になれば顧客の情報を収集して分析することができる。米国の大手小売業者が自社カードの利用者の購買行動を分析することで、どこの家に赤ん坊が生まれるのかをかなり正確に予測したという。妊娠した女性は香りの弱いせっけんやサプリメントなどで独特な買い物行動をするそうだ。そうした消費の癖を分析することで、どこで出産が起こるのかということを予想できる。こうした情報分析をプロファイリングという。

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