「世界最古の宿」の元運営会社、特別清算開始 山梨

西山温泉「慶雲館」の露天風呂=平成29年6月12日、山梨県早川町(中川真撮影)
西山温泉「慶雲館」の露天風呂=平成29年6月12日、山梨県早川町(中川真撮影)【拡大】

 東京商工リサーチ甲府支店によると、飛鳥時代の慶雲2(705)年に創業し、ギネスブックで「世界最古の宿」と認定された山梨県早川町の西山温泉「慶雲館」の元運営会社が、業績不振のため今月8日、東京地裁から特別清算開始の命令を受けた。

 同支店によると、元運営会社は「湯島」(代表清算人・深沢雄二氏)。慶雲館は武田信玄や徳川家康も入湯したと伝えられ、現在も創業当時の源泉を維持している。山あいの高級旅館として知られ、平成12年3月期には約9億9600万円の売上高を上げていた。

 17年には全客室に源泉掛け流しの浴室を設置するなどしたが、近年は消費低迷や価格競争などで業績が低迷。28年3月期の売上高は約5億9600万円に縮小した。設備投資が利益を圧迫し、赤字に転落。負債額も約10億円に達した。

 このため、元運営会社は29年6月、会社分割で新設した株式会社「西山温泉慶雲館」に旅館事業を譲渡し、同12月に現在の商号に変更した。

 新会社の53代社長には、創業家以外から初めて、社員の川野健治郎氏を起用した。川野社長は18日、取材に対し、「教えを守り、温泉旅館一本でやっていく。温泉、料理、サービスを再構築し、さらに認知していただけるように頑張っていく」と話した。

 同社によると、会社分割後の30年3月期の売上高は約5億8200万円。31年3月期決算は売り上げ低迷に歯止めがかっているものの、昨年の台風被害の影響で「わずかに黒字回復には至らない見込み」という。