【2019 成長への展望】清水建設社長・井上和幸さん(62)


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 ■市場は成熟 成長への仕組みづくりへ

 --2019年の国内外の市場見通しは

 「国内は基本的に堅調に推移するとみている。設備投資意欲は依然として高いし、大規模な再開発や駅前の再開発、商業・物流施設などの大型プロジェクトも結構あるからだ。海外はインドネシアやベトナム、タイといった東南アジアの成長率は高いので、インフラ整備の仕事は活発化するだろう」

 --それを踏まえた上での経営方針は

 「長期的なレンジでみれば人口も減少してくるし、世の中が成熟すれば新築マーケットは縮小していかざるを得ない。その中で会社が成長していけるようにする仕組みづくりが基本方針となる。具体的には建設以外の柱をしっかりと育てるための投資を、経営環境が良い今こそ行っていく必要がある。その一つが不動産投資。また、完成後の施設運営管理サービスを提供するBSPや、地方自治体のアセットマネジメントなどを行うインフラ運営、再生可能エネルギーを利用した発電・売電といったエネルギー運営を一本立ちさせることも課題だ。人材育成拠点の整備にも力を入れ、ものづくりの精神を改めて身に付けてもらう」

 --海外戦略は

 「建設の請負は東南アジア中心だが、日本企業のお手伝いだけでなく現地資本や多国籍の仕事も増えている。この領域はしっかりと量を取りに行く。それと並行する形で都市開発やPPP(官民連携)案件にも挑戦することで、地道に海外実績を積み上げていく考えだ。全社に占める海外の売上比率を2割まで拡大すると公言して久しいが、10~15%で推移してあまり伸びていないのが現状。自前で取り組むだけではなくいろいろな企業との提携やM&A(企業の合併・買収)といった手法も視野に入れている。これによってビジネスチャンスを広げ、収益力を強化していきたい」

 --生産性の向上にも力を入れているが

 「18年はロボット施工元年だったが、19年は少しドライブをかけようと思っている。その一環として技術研究所の中にAI(人工知能)センターを設置。資金も投入して周辺技術の間口を広げていく。また、米シリコンバレーに建築も土木部門も人材を派遣しており、ベンチャー企業の技術を吸収した上で展開できないか、ウオッチしている。オープンイノベーションで注目しているのはロボットの世界だ。全てをロボットに置き換えることは難しい。ただ、人と協業すれば10人を要していた作業工程のうち8人分はロボットで対応できるようになるなど、相乗効果を発揮できるようになる。広がりに期待している」

【プロフィル】井上和幸

 いのうえ・かずゆき 早大大学院修了。1981年清水建設入社。執行役員、常務執行役員、専務執行役員、取締役専務執行役員を経て2016年4月から現職。東京都出身。