■デジタル、電力、都市開発…融合型に
--米中関係など景況感をどうみる
「景気の転換点ではないか、との見方が増えている。第4次産業革命の真っただ中にあり、自動運転や電力、通信、電子商取引など従来の産業の枠を超えた融合が始まり、これらの流れにも支えられ、経済のファンダメンタルズは中長期的には相当強いと思う。米中貿易摩擦は、一定の時間で解決していく。米中問題は実質的には安全保障や最先端技術をどちらが握るかの動きで、解決には時間がかかる。将来の偶発的な衝突可能性から市場心理に不透明感を与えている」
--4月の組織改革や20年ぶりの人事改革の狙いは
「デジタル化や産業間の融合の中で、既存の組織間の壁が厚くなりすぎると変化に対応しにくい。一旦全組織を改編し、壁をなくした。モビリティーや電力小売り、リテールの変化も目が離せない。また、人が最も重要な経営資源だ。従来は一人前まで20年と言ったが、基礎教育は5~10年に短縮し、新しい人たちの成長や経験の場を積極的に提供したい。例えば、会社の社長に就く場合、今までの年功序列的な資格制度とは切り離し、役割の難易度、成果に応じて報酬をつける。1.5倍の報酬もあり得る。若い人は、適材適所による実力主義を望んでいる」
--川下やサービス分野にどう取り組むか
「川上に強みがあるが、需要を押さえる意味で川下を強化したい。決済などさまざまなサービスが携帯端末を介する形になり、個人の行動やデータが集約されるとすれば、通信事業について分析する必要がある。一方でこの分野は社会の共通インフラになるとの考えもあり、見極めたい」
--複合都市開発を次世代の成長分野に挙げた
「例えば、銀行口座を持たない人が多い国では一挙に銀行をとばして、携帯を使った電子決済が普及する。アフリカの都市開発は既存のものに縛られない分、一足飛びに自動運転や再生可能エネルギーの分散化電源を使ったスマートシティーができるかもしれない。電気自動車(EV)や電力、水道のノウハウは個々には蓄積しているが、それらを融合した複合都市開発の可能性もありうる」
--ローソンの将来機能は
「社会課題を解決するインフラになっていく。宅配荷物を保管する機能やスペースなどを用意すれば、何度も再配達せずに最寄りのコンビニで受け取り、宅配業界の労働力不足を解決できる。EVが普及すれば、デジタル機能でレンタカーや充電などの機能が広がり、ビジネスの融合が進む」
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【プロフィル】垣内威彦
かきうち・たけひこ 京大経卒。1979年三菱商事入社。オーストラリア三菱商事、農水産本部長、2010年執行役員。13年常務執行役員生活産業グループCEO。16年4月から現職。兵庫県出身。