みずほフィナンシャルグループ(FG)が来年春にメガバンクグループで初となるデジタル通貨を発行することが27日、分かった。60行程度の地方銀行も参加する見通しだ。みずほFGの坂井辰史社長は同日までにインタビューに応じ、電子マネーやスマートフォン決済などキャッシュレスの手段が乱立する中、「銀行口座と連動した利便性を競争力の源泉にする」考えを示した。
利用者はスマートフォンに専用アプリをダウンロードし、銀行口座からお金をチャージすれば、店頭でQRコードを使って買い物代金の決済ができる。価格は1通貨当たり1円で固定。利用者間のデジタル通貨の送金は無料だ。参加する地銀は自行口座でみずほと同じサービスを提供できる。
強みの一つは銀行口座からチャージだけでなく戻し入れを無料でできる点だ。無料通話アプリLINE(ライン)のスマホ決済「ラインペイ」でも口座への戻し入れは可能だが、手数料が発生する。
例えば、食事代の割り勘代金をスマホ決済で受け取って口座に戻す際はみずほの方がお得だ。坂井氏は「銀行系の通貨としての厳格な管理体制や信頼性」も強調する。
みずほFGは昨年、デジタル通貨の「Jコイン構想」を表明し、今年からQRコードの利便性などを確認する実証実験を続けてきた。坂井氏は「実証を年内で終え、できるだけ早く発行する」と意気込む。2020年の東京五輪・パラリンピックまでに普及の初期段階にこぎ着けたい考えだ。
加盟店には、売り上げに応じて支払う手数料をクレジットカードを下回る水準に設定してサービスの導入を促す。加盟店の拡大がデジタル通貨の普及の鍵を握るからだ。
坂井氏は「できるだけ他行と一緒にやった方がいい」と、参加する銀行を段階的に広げていく方針を示す。
他行と組めば、サービスを提供する顧客が増え、加盟店を開拓する際の協力も得られる利点がある。強固な顧客基盤や販売ネットワークを持つゆうちょ銀行にも参加を打診しており、合流するかが普及に向けた試金石になる。