品質管理を徹底、信頼度がアップ
独自に培ってきた優位性のある高級家具市場に加え中価格帯もマーケットにするビジネスモデルは、コスト構造を引き下げることが必須の条件となる。
大和証券エクイティ調査部シニアアナリストの川原潤氏は、「一般的に考えても安い価格で売るにはコスト構造を下げるか、もしくは売り上げを大幅に伸ばさない限り営業利益は上がりません」と指摘し、こう続ける。
「家具のマーケットが大きく伸びることはありません。価格を下げるには、コスト構造をそれなりに合わせないと営業利益率が圧迫されるのは自明の理です。その点、ニトリが効率の高いコスト構造になったのは何年にもわたり努力してきた結果です」
ニトリは、現会長の似鳥昭雄氏が67年の創業当初からチェーンストア経営を志向し、店舗網を全国に拡大してきた。
「海外生産、自社規格の採用など、次々に新機軸を打ち出し、企画、生産、物流、販売を一貫して手掛けてきました。サプライヤーと協力してSPA(製造小売)型のビジネスモデルで、あらゆる過程で徹底したコストダウンをはかってきました。家具からインテリア、生活雑貨へと商品ラインアップを広げることで来店客が増え、売上増につながっています」(川原氏)
さらに川原氏はニトリの高成長に拍車をかけた背景に「“品質の神様”といわれた元広州ホンダ社長の杉山清氏をスカウトして品質管理の徹底に努め、消費者の信頼度をアップさせたことがあります」と指摘する。
ここで、大塚家具とニトリの損益計算書の売上高や営業利益など2社の儲け方の差を数値の増減で示してみた。売上高は単価×数量だが、ニトリは商品単価を抑え、一方で数量を増やし、売上高を伸ばすビジネスモデルだ。これに対して大塚家具は、価格は横ばいながら数量を大きく落とし、売上高は落ち込んだ。
原価についてニトリは徹底したコストダウンを行い、大塚家具は高価格品の仕入れを中心に原価は高いまま。その結果、ニトリは粗利を大幅に伸ばし、大塚家具は横ばい基調だった粗利を減らしている。
販管費はそろってほぼ横ばいだが、ニトリは営業利益を大幅に増やし、大塚家具は営業黒字が現社長となって営業赤字に転落。売り上げ、コスト両面からの構造の違いが、2社の明暗を浮き彫りにした。18年2月期で31期連続増収益が確実視されるニトリの快進撃、17年12月期で2期連続大幅営業赤字を余儀なくされた大塚家具の大苦戦の背景には明白な理由がある。
鈴木貴博
経営戦略コンサルタント
川原 潤
大和証券エクイティ調査部シニアアナリスト
(ジャーナリスト 山口 邦夫 写真=AFLO、iStock.com)(PRESIDENT Online)