IT企業4社の社長をしたのち、現在は経営コンサルタント、研修講師として活動している。
経営者時代、企業発展のカギは人材であることを痛感した。後半の人生は、人を育てることにささげると決めている。
現場ではよく、『楽しく、元気がでるが、甘くない』と評される。このコラムでは、あなたのチームに新しい人が入ってきたときのことを考えてみたい。
まず、あなたは何から始めるだろうか? よく現場で見かける光景として、具体的な仕事の説明や、すぐに結果の出る軽作業などを頼むこともあるだろう。実は、このような始まり方では長続きない。新卒者が3年以内に3割退職してしまうのが、現代。そんなとき、具体的な仕事を任せる前に、ぜひ行ってほしいことがある。
それは「オリエンテーション」だ。オリエンテーションは「新しい関係性が創られるときにその関係をスムーズに進めるための準備」である。一日も早くチームになじみ、その人が実力を発揮できるようにするため、組織やチーム内での暗黙のルールや約束事などを教えて、上司と新人とで合意をとるようにする。
「周りを見て覚えていけ!」は、あまりお勧めできない。
職場では、どのチームにも明文化されていない独自の決まりごとがある。決まりごとの一例を挙げてみよう。日常的な言葉であっても職場の中では異なる場合がある。
「今日中」とは、あなたの中では何時までになるのか?
上司から「報告書を今日中に出して」と指示されたとする。何時までに出せばよいだろうか? 「定時の午後6時まで」「帰宅するまで」「午前0時前にメールで送ればよい」、中には「翌日の朝一まで」という考えの人もいる。だから、何時までというルールを決めて全員で合意しておく必要がある。
あるいは「人によって解釈が分かれる言い方をするのはやめて、具体的に話そう」と事前に合意する。
言葉の解釈の違いは、気がついたときには手遅れになる場合もある。
「私が見ている世界とあなたの見ている世界は違う」のだ。
ぜひ、新人にはオリエンテーションを行って、スムーズなスタートを切れるように準備してほしい。
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【プロフィル】石井元
いしい・はじめ 1962年、神奈川県生まれ。米ペンシルバニア大ウォートンスクールMBA(経営学修士)。IT系企業4社の社長、2社の副社長を歴任。立ち上げから成功、倒産、買収などを経験。現在は経営コンサルタントや研修講師として活動。チームフロー認定コーチ。共著「未来を創る経営者」(生産性出版)。趣味は落語。