□ワールド・ワイズ・ジャパン代表 LOGOSプロジェクト主幹・濱口理佳
1948(昭和23)年7月、法律第122号として第2回国会において「風俗営業取締法」が成立、同年9月1日から施行された。風俗営業取締法第1条第3号に「玉突場、まあじゃん屋、その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」と規定され、ぱちんこ営業は、射的場、弓場等とともに「その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技」に該当するものとして取り扱われた~
かつて本コラムで「ぱちんこの歴史」に触れた際、執筆協力していただいた警察庁刑事局保安部防犯課中野啓次郎専門官(83年当時)の言葉である。この48年が大衆娯楽・ぱちんこの誕生年だとすると、ぱちんこは今年、生誕70年を迎えることになる。
戦後、生きるために精いっぱいだった時代を経て、「戦争のない平和」を背景に社会は成熟していった。技術革新により生活の利便性は高まり、余暇を充実させる手段も多種多様に広がりを見せた。高度経済成長期の勢いに乗るように社会には生活に直結した事物以外に魅力あふれるモノやサービスが氾濫。人々はそれらを当然のように受け入れ、生活を豊かにしていった。
戦後から現在に至るまで、本当にめまぐるしく生活環境が変化した。平和な社会を前提に人々の視線が「生存」から「豊かな生活」にシフト。ぱちんこという娯楽も時代のニーズに呼応する形で変容し、ビジネススタイルも家業から企業へと変化を遂げた。もちろん、ぱちんこに限らず、さまざまな産業が時代の要請を受け入れながら“社会に許容される形”を模索し、持続可能な成長の道を模索し続けている。
さて、ヒトに人生があるように、ぱちんこにも歴史がある。その時代ごとの人々に支えられ70歳を迎えた娯楽文化に対し、目くじらを立てて「不要」の二文字を突きつけることが適切だとは思えない。社会の価値観に合わせた変化を前提に、あらゆる産業が人々の生活を彩る社会を目指すことはできないのだろうか。サスティナブル社会にあって、多様性をヒトに対してだけでなく、産業にも認める世の中の実現が望まれるところだ。
◇
【プロフィル】濱口理佳
はまぐち・りか 関西大学大学院文学研究科哲学専修博士課程前期課程修了。学生時代に朝日新聞でコラムニストデビュー。「インテリジェンスの提供」をコアにワールド・ワイズ・ジャパンを設立。2011年、有志と“LOGOSプロジェクト”を立ち上げた。