■初心忘れず、ユーザー目線
□鵜澤璃 スウィートマミー社長(平成29年度第23回 優秀技術賞受賞)
熊田曜子、春名亜美、蛯原英里という旬の“ママさんタレント”をイメージモデルに起用できるまでに成長し、マタニティー業界の先端を走る。マタニティー服や授乳服などで人気のネット通販ブランドは2004年、千葉県浦安市で誕生した。
前年の女児の出産直前まで、システムエンジニアとして東京・表参道の外資系企業に通勤した。そのときのひらめきが起業につながった。
「当時はオフィスに着ていけるようなマタニティー服が市販ではなかった。ところが、海外の通販サイトでは売っている。日本でも需要があるはず」
産後、海外のサイトで購入したマタニティー服をネットオークションに出してみると、購入価格より高く売れた。「マーケットは確かに存在する。日本では商品が少ないだけ」と、2004年5月に会社を立ち上げた。社名には「ママになってもきれいでおしゃれでいてほしい、ママになった美しさに自信を持って輝けるように」との願いを込めた。初年度で約3000万円を売り上げたことで、夫で代表取締役を務める鵜澤光児氏もサラリーマンを辞め、経営に参加した。
ヒット商品に3年かけて開発した授乳ブラジャーがある。ある通販サイトでは、2009年の発売後、ほぼ1位という。2006年に男児を出産する際、妊婦のためのブラジャーがないことに気づいた。「下着はずっと身につけるものなのに、既製品はフィット感もなくただの当て布に過ぎなかった。ママさん目線の物作りが大切」。やさしいフィット感を出すためには、ミリ単位の技術が求められる。そのため、下着は、海外の製造ラインを使わない「メード・イン・ジャパン」にこだわっている。
昨年9月には、初めてのリアル店舗、代官山店(東京都渋谷区)をオープン。システムエンジニアだったため、ホームページ作成に抵抗がなかったことや、初期投資が少ないことからネット通販でスタートしたが、店舗を構えることは夢だった。
「それに、お客さまにとっては、ネット通販ではできない試着ができる。私たちは直接、ママの声を聞くことができる。顔を見てコミュニケーションを深めることは、ユーザー目線を重視した“お客さま満足度”を高めることにつながる」
少子化にはどう対応するのか。
「次の子供が生まれても、私たちの商品を使っていただけるリピーターが多い。ママさん目線を大切に、そして、初心を忘れずに、商品力を高めていくことに尽きると思う」
5年後には、ネットと店舗で年商30億円が目標。シンプル、プリティ、エレガンスをキーワードに、ママたちにエールを送り続ける。
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【プロフィル】鵜澤璃
うざわ・れい 慶応大文学部卒。在学中に代表取締役の鵜澤光児氏と結婚した。2女1男の母親。趣味は読書で、英語の原作を読むのが好き。好きな言葉は、tomorrow is another day.「人によってはネガティブに感じる言葉かもしれませんが、私にとっては希望に満ちた言葉。どんなことがあっても明日は新しいスタート。前向きな気持ちを忘れず、感謝の気持ちを忘れず、毎日を楽しく」と話す。41歳。
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〈企業プロフィル〉2004年創業、自社で企画・製造・販売を行う。自社サイトに加え楽天、ヤフー、アマゾン、ゾゾタウン、SHOPLISTと販路を増やしアメリカ、カナダなど海外進出も果たす。2014年には約1万9千店の中からネットショップ大賞金賞(Eストアー主催)を受賞。2017年9月に初の実店舗となる代官山店を東京都渋谷区にオープンした。同年に中国のネット通販、天猫国際に出店。東京都港区と千葉県浦安市にオフィスを置く。
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■好熱菌で新しい産業の育成
□渡邉寛 サーマス代表取締役社長(平成29年度第23回 優秀技術賞部門奨励賞受賞)
千葉大発のベンチャー企業の命運を握るのは「好熱菌」だ。
好熱菌を一言でいうと、高温環境を好む特殊な微生物のことだが、なじみがない人には少々難しい分野かもしれない。それでも、社名の由来を聞くと、何を目指している会社かがわかってくる。
ラテン語では「熱い」を意味する、サーマス(Thermus)という単語が、好熱菌の属名のひとつとして使われているという。一方、会社設立の目的は「好熱菌を中心とした事業展開」。このため、社名がサーマスとなった。
会社表記はSermasと書く。これは造語で、好熱菌を活用することによって、多くの顧客(Mass)に快適なサービス(service)を提供するとの思いが込められた。好熱菌の力を最大限に引き出した新しい健康産業の育成が会社の柱だ。「研究の結果、好熱菌は腸内を整えるための活動、いわゆる“腸活”の司令塔の役割を果たすことがわかりました。豚に好熱菌を与えると腸内環境が良くなり、さらには、内臓脂肪や皮下脂肪が減り、筋肉が増えることもわかりました。豚肉中の赤身に対しての脂肪の割合が抑えられていて、うま味はたっぷり、けれども口あたりがさっぱり。ヘルシーな肉になるのです」
好熱菌を活用したメタボリックではない豚「ノンメタポーク」が誕生した。通常よりもビタミンB1が豊富で健康的な豚肉は2013年から販売され、現在は千葉のほか、東京、大阪、富山のスーパーなど販路が拡大中だ。
鶏への研究でも好熱菌の効果が確かめられている。産卵率がよくなったほか、感染症にもかかりにくいという。どうして菌の作用で鶏や豚が病気にかかりにくくなるのかなど、現在、理化学研究所とともにメカニズムの解明を急いでいる。
「人々の生活に役立つ研究開発を行う。家畜を育てる際に薬ばかりに頼ると、消費者は食に不安を抱くだろう。それが好熱菌のような微生物を餌に活用すれば、将来を担う子供たちのために安心・安全な食材を残すことができる」
微生物を介した抗病力の高い畜産業の開発など、食料生産分野での技術革新の実現を目指している。
高齢になると筋肉が衰え、転倒などケガをすることが多い。それを防止するために、好熱菌を活用した新商品の開発を最終目標に据えている。
「豚で筋肉が増えることが分かったわけですから、人間への応用も考えたい。サプリメントの形で提供できれば。そこまで行くにはまだまだ超えなければいけないハードルがいくつもあります」
好熱菌を活用した新しい健康食品や医薬品が、千葉から世界に供給される日がやってくることを期待したい。
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【プロフィル】渡邉寛
わたなべ・ひろし 京葉ガスグループの京葉プラントエンジニアリングで30年にわたりプラント施工関連業務に携わる。その後、新規事業のバイオ関連部門責任者として尽力し、2016年8月、サーマスの代表取締役に就任。以前よりプライベートで無施肥、無農薬の自然農法によるお茶などの栽培を実践するとともに、食の安全の啓発活動に取り組む。「食に興味があったので、サーマスでの仕事は自分の使命と思い取り組みたいと思った」という。陶芸でリフレッシュを図るのが至福の時間。63歳。
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〈企業プロフィル〉千葉大発ベンチャーとして2013年1月に創業。主要株主は京葉プラントエンジニアリング(千葉県市川市)、日環科学(千葉市)など。高い温度で増殖する好熱菌の特性を活かした発酵肥飼料や微生物医薬品の開発と普及、予防医学・新規環境健康産業の創出が主な事業内容。ジューシーかつヘルシーなブランド豚肉「ノンメタポーク」を生産面からプロデュースするなど、技術成果の社会への発信に力を注ぐ。市川市の京葉ガス本社西館と千葉市稲毛区の千葉大知識集約型共同研究拠点、大分県国東市の3カ所にオフィスや研究室を置く。
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■千葉元気印企業大賞
新しい千葉県の産業と、各企業の活力アップの一助になることを願って1995(平成7)年度に制定された表彰制度。わが国の産業基盤を支える地域企業の発展に一層の弾みをつけていただくことを目的に、新技術、新製品開発、ユニーク経営などを通じ、活力あふれる経営で時代を先取りする中堅・中小およびベンチャー企業を広く表彰するもの。応募資格企業は千葉県内に本社および事業所をもつ、株式上場会社を除く全企業(ジャスダック登録企業は応募可)
【主催】フジサンケイビジネスアイ 【共催】千葉興業銀行
◇問い合わせ先
フジサンケイビジネスアイ 千葉元気印企業大賞事務局
〒100-8125 東京都千代田区大手町1-7-2
(電)03・3273・6180
FAX03・3241・4999
E-mail chiba-genki@sankei.co.jp
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