【eco最前線を聞く】容器改良でCO2と食品ロス削減

ファミリーマートの総菜ブランド「お母さん食堂」の売り場で商品を補充する店員=東京・池袋(同社提供)
ファミリーマートの総菜ブランド「お母さん食堂」の売り場で商品を補充する店員=東京・池袋(同社提供)【拡大】

 □ファミリーマート 中食構造改革推進部・中野綾美氏

 コンビニエンスストア大手のファミリーマートが総菜ブランド「お母さん食堂」にガス置換包装と呼ばれる技術を採用した新容器を導入することで、プラスチック原料の使用量や二酸化炭素(CO2)排出量の削減に挑んでいる。食品容器に使われた廃棄物は社会問題にもなっており、その削減はコンビニ業界にとって課題の一つでもある。商品・物流・品質管理本部中食構造改革推進部拠点整備グループの中野綾美氏は新容器の導入による環境面の効果について、「CO2排出量の削減だけでなく、食品ロス削減にもつながっている」と胸を張る。

 ◆酸化と菌の繁殖を防止

 --新容器はどんなものか

 「容器内の酸素と水分を追い出して、食品の酸化と菌の繁殖を防ぐのが特徴だ。容器はプラスチック製食品容器と上蓋となるフィルムで構成され、食品容器、フィルムともにガスバリア層と呼ばれる層を新たに設ける多層構造とした。製造工程も従来とは異なる。まず容器の中の空気を抜いて、真空状態にする。その後、ガス(窒素とCO2)を容器内に注入、フィルムで密閉するという流れになっている」

 --新容器の導入に至った経緯は

 「単身世帯や共働き世帯の増加により、総菜の販売は右肩上がりで伸びている。しかし、総菜商品には大きな問題があった。それは消費期限が2日と短いことだ。日持ちを良くするために食品添加物の量を増やすという考えもあるが、消費者の食に対する安全意識は年々高まっている。このため、別の方法で消費者のニーズを満たさなければならない。当社は商品の酸化を防ぐことができる新容器に着目。2016年秋に消費期限が5日程度までに伸びる容器に一新した」

 ◆消費期限さらに延ばす

 --新容器は、環境負荷低減にもつながる

 「従来の容器で使用するプラスチック原料は年換算で約217.2トン。これに対し、新容器は約183.6トンと、33.6トン削減を実現した。総菜容器を焼却した場合に発生するCO2排出量は従来比153.7トン減の352.8トンとなる。ガス置換包装を採用した新容器は環境配慮型の食品容器といっても過言ではない」

 --効果はそれだけにとどまらない

 「総菜は消費期限の数時間前に撤去、廃棄される。しかし、消費期限の延長により、店頭で販売する時間が長くなる。このため、食品ロスの削減にもつながっている。食品ロスの削減量などの数字は試算していないが、店舗の過剰発注の減少といった効果もあり、新容器の導入メリットは大きい」

 --今後の展開は

 「店舗などからは『もっと日持ちを良くしてほしい』との要望は多い。今後、消費期限をさらに延ばすための改善をしていく予定だ。また、総菜だけでなく、他の商品などにも採用を拡大できるか検討する。また、消費者の一部からは『トップ部分がフィルムで包装されている食品容器は加工食品に見える』との指摘もある。容器のデザインなども改善していきたい」(松元洋平)

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【プロフィル】中野綾美

 なかの・あやみ 名古屋大文卒。2010年伊藤忠商事入社。17年4月ファミリーマートに出向。弁当・総菜といった商品の新カテゴリーの開発や生産拠点整備などに携わる。愛知県出身。