【経済インサイド】「マイルドセブン」は日米貿易戦争の“産物”だった 加熱式でも“旗印”に (1/3ページ)

「たばこと塩の博物館」に展示されている発売当時の「マイルドセブン」(左)。パッケージデザインが「セブンスター」と酷似していた。「キャビン」「キャスター」とともに輸入たばこを迎え撃つ3本柱として開発された
「たばこと塩の博物館」に展示されている発売当時の「マイルドセブン」(左)。パッケージデザインが「セブンスター」と酷似していた。「キャビン」「キャスター」とともに輸入たばこを迎え撃つ3本柱として開発された【拡大】

  • 日本たばこ産業の加熱式たばこ「プルーム・テック」。たばこカプセルの銘柄は、マイルドセブンの後継である「メビウス」だ

 トランプ米政権が鉄鋼や自動車への関税引き上げを矢継ぎ早に打ち出し、“貿易戦争”の波が日本へも押し寄せている。昨年、発売40周年を迎えた紙巻きたばこのベストセラー商品「マイルドセブン」(通称マイセン)が誕生したのも、日米貿易摩擦が背景にあったことをご存じだろうか。5年前にその名は「メビウス」へ変わり、日本たばこ産業(JT)の加熱式たばこのブランド名としても採用、海外メーカーとの激しいシェア争いを演じている。

 今を去ること半世紀前、JTの前身である日本専売公社は、たばこ市場の開放を求める米国の圧力の高まりを懸念。昭和43年策定の長期計画により、若手職員を海外へ派遣して商品開発やブランディング戦略を学ばせるなど、海外メーカーの国内参入を視野に入れた対応を加速させた。

 当時はたばこ専売制度のもと、輸入たばこには90%もの高い関税が課せられ、国産たばことの価格差が歴然としていた。そのため「ラッキーストライク」「マールボロ」といった輸入たばこ(いわゆる「洋モク」)は、「高級な舶来品」として珍重される存在だった。

 「高根の花だった輸入たばこの価格が市場開放によって引き下げられれば、消費者の目は一気にそちらへ向きかねない」。JTが運営する「たばこと塩の博物館」(東京都墨田区)の鎮目良文学芸員は、専売公社が当時抱いていた危機感をそう解説する。

「洋モクに対抗する戦略商品」