東芝は、再生の前提条件としてきた半導体事業の売却が完了し、収益力強化に向けた攻めの中期経営計画の策定作業に着手する。車谷暢昭会長は、営業利益の9割を稼ぎ出した半導体に代わる収益源として、機器売り後に補修やサービスで継続して稼ぐ「リカーリング」と呼ばれるビジネスモデルを強化する考えを示す。ただ競合も同様の取り組みを急ぐ中、稼ぎ頭に育てられるかは予断を許さない。
「AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を使った、リカーリングビジネスを強化したい」
車谷会長は5月15日の決算会見で、従来の機器売り切り型ではなく、周辺サービスなどで稼ぐリカーリングを今後の柱に育てる意向を表明した。東芝が強みを持つ工場監視システムなどを、AIと連携させ、遠隔で自動的に最新機能へ更新できる有料サービスモデルなどを次々と構築し、それを世界展開すれば安定収益を稼げるというわけだ。
だが、同様のモデルは既に日立製作所や三菱電機も取り組み、実際に成果を上げつつある。そうした中で、不正会計問題の発覚以降、人材流出が続いた東芝がどうサービスを差別化し、収益への貢献につなげられるかが大きな課題になる。
東芝は、ここ数年で事業売却を重ね2019年3月期の連結売上高が3兆6000億円とピークから半減する見通し。半導体売却で得る資金の多くを充てるリカーリングを早く育成できなければ縮小均衡からは抜け出せず、名門の復活は遠のく。(今井裕治)