【生かせ!知財ビジネス】中小企業の顧客1000社目指す


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 □日本知財サービス・藤田貴男代表

 中小企業向けに特化した事業を展開する特許事務所、日本知財サービス(東京都港区)。新たな発想で中小企業向けのサービス構築に挑む、藤田貴男代表に聞いた。

 --なぜ中小企業に特化したのか

 「多くの社長や経営陣と直接話ができ、良い仕事をすると直接感謝される。信用が得られれば、企業秘密であるはずの研究開発戦略、新商品やブランド名について相談してくれる。非常にやりがいがある仕事だ」

 --大企業と比べ、特許などの出願件数が圧倒的に少ない中小企業は、割に合わない顧客層だといわれる

 「弁理士とは知的財産の専門家。出願代理業務だけで稼ごうという従来の特許事務所の考え方では中小企業の知財を支援できているとも、弁理士の社会的責任を果たしているとも思えない。当事務所は“全ての中小企業に知財部を”を掲げ、しっかりとした知財部サービスを提供するところに商機があると考えている」

 --知財部サービスとは

 「知財部もなく、専任の知財担当者も雇えない中小企業のために、知財クラウド上にバーチャル知財部を設けて知財部の業務に必要な機能を提供する。出願代理先の顧客へは既に『お客様専用ページ』サービスとして提供を始め、利用企業は500社を超えている。出願書類のダウンロードや知財権期限管理、弁理士とのチャット相談などの機能を搭載、随時改善し、追加している。まず、1000社のユーザー獲得が目標だ」

 --新サービスの発想はどこから

 「中小企業の特許出願件数は少ないが、1社当たりの管理コストはそう変わらない。出願1件当たりの料金は本来高くなるが、中小企業は料金が高ければ権利化を断念し、知財保護がおろそかになる。特許事務所は中小企業が権利獲得のメリットを享受し、リピーターになってもらい初めて中小企業向けサービスは成り立ってくる」

 --取引促進のプラットフォームということか

 「実は当事務所で出願業務は売上高の4割程度しかない。知財相談や技術コンサルティング、知財活用支援などのニーズにも対応し、こちらの収益が多い。知財の専門家として、中小企業に負担のかからない金額で知財制度の利用を幅広く提供できる、新たな仕組みが必要だと気づいたからだ」(知財情報&戦略システム 中岡浩)

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【プロフィル】藤田貴男

 ふじた・たかお 都立大(現首都大)大学院修了、工学博士。豊田中央研究所、大阪大助教、産業技術総合研究所などを経て2013年11月日本知財サービス設立。弁理士。44歳。兵庫県出身。