大手居酒屋チェーンの串カツ田中は1日、ほぼ全店で全面禁煙措置を始めた。居酒屋大手では初めての取り組みで、客数減の懸念もささやかれているが、同社の貫(ぬき)啓二社長は「中長期的にみれば、業績に全く影響しない。短期的な客数減もほぼなく、勝算はある」と自信をみせる。
同社は国内全192店のうち9割超の176店を全席禁煙、13店はフロア分煙とする。加熱式たばこも禁煙対象。全面的に喫煙できるのは子供が来ない立ち飲み業態の3店のみだ。
貫氏は産経新聞のインタビューに対し、全面禁煙化について「串カツをすしや焼き鳥などと並ぶような食文化に育てるため、家族連れや将来の利用者になる子供を重視する長期戦略に基づくものだ」と説明。「店内がたばこの煙でもうもうとしているようでは、子供重視の戦略と現実に大きなギャップが生じる」とし、当然の判断だと強調した。
4月12日に禁煙化の方針を発表してから客数減を懸念する声も出ているが、貫氏は「もはや喫煙比率は2割未満。禁煙理由で来客数が減っても家族連れ増でトータルでは増加する。短期的なマイナスがあっても十分カバーできる」と話す。
外食業界では2020年東京五輪・パラリンピックを前にした受動喫煙対策強化の流れを受け、全面禁煙などに乗り出す動きも出ている。ファミリーレストランチェーンではゼンショーグループの「ココス」、吉野家ホールディングス傘下の「ステーキのどん」「ステーキハウスフォルクス」が5月以降、全面禁煙方針を相次いで打ち出した。
来客に占める喫煙者の割合が比較的多い居酒屋業界では一部で試験的な禁煙店舗が出店されている程度だが、今後は串カツ田中の状況をみながら対応を図っていくもようだ。(平尾孝)