フランスのクルーズ大手ポナンが実施する探検型クルーズ(同社提供)【拡大】
南極をめぐるクルーズツアーなどを手掛けるフランスのクルーズ大手PONANT(ポナン、本社・マルセイユ)が6月から、日本のクルーズ市場に本格参入する。クルーズ船数を2021年までに2倍以上に増やし、日本を寄港地に含むツアー企画を強化するほか、新たに日本駐在のマネジャー職を選任。日本のクルーズ需要拡大を見据えた態勢整備を急ぐ。
ポナンは南極や南米のアマゾンなど港湾が整備されていない地域をめぐる「探検型クルーズ」の世界最大手。1隻当たりの乗客人数は200人前後と数千人が乗船する大型クルーズ船よりも小規模ながら、快適な客室と、大型船では入れない場所をめぐるツアー企画で人気を集める。
所有船数は現在5隻だが6月から年間1~2隻ずつ増やして21年に12隻態勢とし、日本寄港のツアーに振り向けるほか、日本ツアーの増便も検討する。ほとんどの新船は全客室バルコニー付きとし、海中の様子を大型のガラス壁面越しに観察できる「海中ラウンジ」を設けるなど上質感を高めた。
今月31日には、日本人の国内駐在マネジャーが選任される。これまで代理店経由だったツアー販売を直接手掛け、年間300~400人にとどまる日本人のツアー参加者を早期に倍増させるほか、将来的には近海をめぐる新たな周遊ツアーの立ち上げも視野に入れる。
国土交通省によると、17年の訪日クルーズ旅客数は、前年比27.2%増の253万3000人と過去最高を記録したほか、外国船社のクルーズ船寄港数も過去最高となった。政府は20年に500万人に増やす目標を掲げており、国交省は訪日クルーズ旅客の受け入れ態勢強化に向け、旅客施設の設備充実などの施策を進めている。
欧米客の日本ツアー人気が高まっているほか「乗船マナーの良好な日本人客は欧米客から敬遠されにくい」(関係者)などの事情もあり、世界の大手クルーズ各社が日本ツアーを相次いで強化している。ポナンは“探検型”を前面に押し出すことで、競合他社との差別化を図る。