東芝の半導体子会社「東芝メモリ」の売却手続きが、中国の独占禁止当局の審査で承認されたことが17日、分かった。当初は3月末までに売却を完了する予定だったが、中国の承認作業が遅れていた。東芝は喫緊の課題だった東芝メモリの売却で2兆円の資金を得ることになり、財務基盤が大幅に改善する。
東芝メモリの売却先である米投資ファンド「ベインキャピタル」に、中国当局から17日に売却を承認するとの通知があった。ベインキャピタルの関係者は、フジサンケイビジネスアイの取材に対し「これから東芝と最終契約を結び2週間程度で取引が完了する見込みだ」と話した。
東芝は、2017年9月に東芝メモリをベインキャピタルや韓国の半導体大手SKハイニックスなど「日米韓」連合に総額2兆円で売却する契約を結んだ。
売却をめぐっては中国当局が昨年12月に審査を始めたが、審査が長引き、最終期限が今月28日に迫っていた。
東芝メモリは、東芝の営業利益の大半を生み出す稼ぎ頭。だが、メモリー事業は需要の変動が激しく定期的に多額の投資も必要で、経営危機から脱したばかりの東芝に多額の投資を負担する余力はなく、売却できるかが焦点になっていた。
東芝は、19年3月期に東芝メモリの売却益として9700億円を見込む。東芝メモリの売却益は、重点分野への投資に充て、半導体に代わる稼ぎ頭の育成に取り組む。ただ、東芝はここ数年、経営危機を脱するために医療機器やスマートメーターなどの成長事業を相次ぎ売却し牽引(けんいん)役は不在の状態。東芝の車谷暢昭代表執行役会長兼最高経営責任者(CEO)は15日の決算会見で、収益力強化に向け年内に5年間の中期経営計画を策定し成長軌道への回帰を目指すとしたが、具体策はまだ見えていない。