ベンチャー企業の新たな資金調達手段である株式投資型クラウドファンディング(CF)開始から1年-。調達を仲介するサービス運営3社が集めた資金総額が累計で10億円の大台を突破したことが17日、分かった。国内初のビジネスモデルを立ち上げる企業の資金調達が数分で完了するなどサービス浸透に期待が高まっており、今年末には累計の調達総額が約5倍の53億円超に膨らむ見込みだ。柔軟かつ機動的な資金調達手法への需要は大きく、市場が急拡大している。
銀行融資枠も増加
国内外で店舗展開を目指す熟成すし専門店運営の悟中(東京・銀座)は昨年、株式投資型CFで1610万円を調達した。大学と組んで熟成技術の研究を進めており、廣瀬真由加社長は「直接は配当につながらない技術研究なのに、投資家に賛同してもらえたことが大きい」と株式投資型CFが、同社のビジネスモデルに合った手法だったと歓迎する。同社は54人の投資家に対し、店での食事に使える優待券のほか特別メニューなどで還元している。
一方、システム投資のため、5000万円の資金調達を予定する人材紹介ビジネスの社長は「銀行融資は担当者の判断に左右されるが、クラウドファンディングで資本を増やすことで、銀行の融資枠も増える。海外展開に向けて新規上場を目指す」と話し、株式投資型CFが銀行融資獲得への“橋渡し役”にもなると期待する。
数多くの投資ファンドや個人投資家が有望な起業家に競って資金を投じる米シリコンバレーなどに対し、日本はベンチャー企業の創業期の資金調達環境が未熟だ。数億円規模の資本金を元に成長していく海外ベンチャーに対し、銀行融資が中心の資金調達では競争力で太刀打ちできない。