韓国・平昌オリンピックに沸き、現在行われているパラリンピックに感動を受けている。
いよいよあと2年で東京オリンピック・パラリンピックも開催される。それら国際的な枠組みのイベントでも重要視されるのが「SDGs」(持続可能な開発目標、Sustainable Development Goals)だ。
貧困・飢餓の撲滅、気候変動対策などを目指して国連で採択された、SDGsの達成に向け貢献することは、世界ビジネスの主戦場になりつつある。
昨年末に第1回「ジャパンSDGsアワード」で、外務大臣賞を獲得した衛生・健康関連メーカーのサラヤ(大阪市東住吉区)と、特別賞を獲得した吉本興業(同中央区)の活動から分かりにくいとされているSDGsへの企業関与を考えてみる。
サラヤは「いのちをつなぐ」という言葉を念頭に置いて「世界の衛生・環境・健康に貢献する」ことを企業活動の中心に添えている。
主力商品の一つ「ヤシノミ洗剤」に関連して、原料生産地のマレーシア・ボルネオ島における生物多様性の保全や野生動物の救出プロジェクトが有名でもある。
これらの活動が行われるきっかけになったのがアブラヤシ農園による熱帯雨林破壊だった。商品そのものの存在をも否定されかねないということで、危機管理を意識した結果だ。その活動を現在は加速させて、SDGs活動と連動させることで、手肌と地球にやさしいその商品のコンセプトを伝え、さらには売り上げの1%がボルネオの環境保全に使われることから売り上げが伸びた。
また、ウガンダでの手洗いと消毒のプロジェクトでは、手洗いや消毒の概念を社会に根付かせることで、子供の死亡率の削減に貢献した。ユニセフを通じ、無添加せっけんの売り上げの1%を手洗い普及活動の支援に充てている。
このようにサラヤでは、SDGsへのコミットをその商品群で明確にして、その活動を消費者が一緒に追体験する仕組みによりSDGsと企業活動を両立させている。
「吉本興業グループは『笑い』を中心としたエンターテインメントによる社会貢献と、『誰もが、いつでも笑顔や笑い声をもてる社会』の実現を目指しています」という行動憲章を掲げる吉本興業。
その行動は社会が豊かになるための心の豊かさを目指すものだ。その心のありようにSDGsを合致させたことと、その事業特性によりメディアを駆使してSDGsへの発信・啓発を行い特別賞を受賞した。
このようにSDGsは、製造業であればそのプロダクツそのものと、その製造・マーケティング過程の中に埋め込むこと、サービス業であれば社会に与えるその影響力と重ねることにより、企業成長を促すことができる。
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【プロフィル】吉田就彦
よしだ・なりひこ ヒットコンテンツ研究所社長。1979年ポニーキャニオン入社。音楽、映像などの制作、宣伝業務に20年間従事する。同社での最後の仕事は、国民的大ヒットとなった「だんご3兄弟」。退職後、ネットベンチャーの経営を経て、現在はデジタル事業戦略コンサルティングを行っている傍ら、ASEANにHEROビジネスを展開中。60歳。富山県出身。