■日本郵便・オープンイノベーションプログラム
日本郵便と起業支援のサムライインキュベート(東京都品川区)が初めて実施したオープンイノベーションプログラム「ポストロジテック・イノベーションプログラム」。1日、JPタワー(東京都千代田区)で成果発表会「デモデイ」が開かれ、最優秀賞には名古屋大学発ベンチャーのオプティマインド(名古屋市中村区)が選ばれた。今回のデモデイに臨んだ4社の事業プランは完成度が高く、一部は現場での利用が始まる。日本郵便はベンチャーとの協業に意欲的で、今夏も第2回プログラムを実施する。
◆配達ルート最適化
最優秀賞のオプティマインド(名古屋市中村区)が開発した人工知能(AI)を使った配達ルート最適化システムは、郵便番号を入力するだけで、携帯情報端末の地図上に最適なルートが表示される。埼玉県草加市の草加郵便局で行った実証実験では「新人職員がこのシステムを使えば、ベテラン職員とほぼ同じ時間で配達をこなせることが確認できた」(松下健代表)という。
また、約300人の来場者による投票で選ばれる「観客賞」はITベンチャー、MAMORIO(マモリオ、東京都千代田区)に決まった。自社開発の紛失防止タグを荷物に付けておき、荷物を紛失した際に配達用バイクに装備する探索センサーで探しやすくする。
受賞は逃したが、コインロッカーを使わずに手荷物を預けられるサービスを手がけるecbo(エクボ、同渋谷区)は、郵便局から宿泊先などに手荷物を運んでもらえるサービスを提案。東京都渋谷区の渋谷郵便局で行った実証実験で問題ないことを確認し、今月から都内と神奈川県内の計5局でサービスを始める。小型無人搬送車を使って山間部の配達効率化のアイデアを出したDrone Future Aviation(ドローン・フューチャー・アビエーション、同区)も今秋、日本郵便と共同で実証実験を始める。
昨年9月のプログラム発表後、ベンチャー経営者や起業家などから寄せられた105件のアイデアから書類選考などで採択された4人の起業家は、日本郵便の課長級以上の幹部職員とともに約3カ月間にわたり、ほぼ毎日顔を合わせて議論をしながらアイデアを磨き上げた。
◆スピード感を理解
オプティマインドの松下代表は「最初に会った日本郵便の担当者から業務上での困りごとを、これでもかというくらいたくさん聞かされた」という。この種のプログラムに何度も参加しているマモリオの泉水亮介取締役は「事前の応募説明会に役員全員が出席しているプログラムはいままでなかった」と日本郵便がトップから現場までベンチャーならではのスピード感を理解していることを肌で感じた。
ドローン・フューチャー・アビエーションの波多野昌昭社長は「日本郵便のメンター(世話役)がつきっきりで発表練習につきあってくれた」、エクボの工藤慎一社長も「本社と現場との連携がスムーズで実証実験がやりやすかった」と振り返る。
宅配便との厳しい競争にさらされている日本郵便は「これからの時代にあった新しい郵便・物流サービスを打ち出したい」(横山邦男社長)という思いが強く、ベンチャーとの協業を模索する動きは加速しそうだ。