東京23区内で唯一の酒蔵が廃業へ 140年の歴史に幕 増収でも生き残れぬ業界の苦境 (1/4ページ)

 戦前から続く日本酒の酒蔵(さかぐら)では東京23区内で唯一残っていた小山酒造(株)(東京都北区、小山周社長)が、2月28日で清酒製造事業から撤退、事実上廃業することが明らかになった。(東京商工リサーチ特別レポート)

 創業は1878年(明治11年)。北区岩淵の湧き水を利用して以来、この地で140年の長きにわたり酒造りを続けてきた。銘柄「丸眞正宗(まるしんまさむね)」は、今でも根強い人気を博している。

 最近も雑誌や専門誌などに取り上げられ、売上高も回復基調にあった矢先、突然の廃業の知らせに関係者からは驚きの声があがっている。

◆代表銘柄は「丸眞正宗」

 小山酒造は初代小山新七氏が1878年(明治11年)に創業した。同地で酒造りに適した湧き水を発見したことに由来する。代表銘柄は「丸眞正宗」。現社長の小山周氏は5代目にあたる。

小山酒造の本社兼酒蔵

小山酒造の本社兼酒蔵

 現在、東京都酒造組合(立川市)には同社を含め10社の蔵元が加盟している。このうち、9社は青梅市や福生市など多摩地区にあり、23区内に本社と製造拠点を置くのは小山酒造だけだ。

 大正、昭和にかけて大手の酒造業者が近代化に乗り出し量産体制を確立した。だが酒造りには良質な水が欠かせない。都内に宅地化、工業化の波が押し寄せ、多くの中小の酒造業者が都心部での酒造りを断念するなか、23区内では同社だけが生き残り、酒造りを脈々と受け継いできた。

近年は増収が続いていたが…