■バーボン本格強化へノウハウ生かす
--昨年は酒類の安売り規制が行われた
「官製値上げはよいことでない。節約志向が根強い一方、より良いモノを求めるお客さまも多く、メーカーとしては価値志向の商品開発を進めるのが使命。開発・研究に投じる予算や人材を拡充していく」
--自身も民間委員を務める経済財政諮問会議が3%の賃上げを提唱した
「ボーナスや定期昇給のほか、さまざまな施策で社員に還元したい。具体的には教育・研修などの人材投資。定年退職後も働き続けられるよう、スキルアップを図りたい」
「健康への投資も重要だ。定期診断に限らず社員を個別にフォローし、自社のサプリメント製品の知見も生かして健康を守っていく。疾病の予防は生産性の向上にもつながるはずだ」
--ジャパニーズウイスキーの評価が高まる一方、原酒は不足している
「ご迷惑を掛けているが、国内でも受け入れられてきたバーボンを今年は本格的に強化したい。日本の生産ノウハウを生かして『メーカーズマーク』のプレミアム品を出し、海外でも販売する。スタンダード市場は引き続き『ジムビーム』だ。約1兆6000億円を投じた米ビーム買収が、丸3年を経てサントリーの世界戦略にはまってきた」
--グローバル化する組織で、「利益三分主義」や「やってみなはれ」といった風土をどう継承するか
「理念の共有なくして、グローバル展開は成り立たない。砂漠に水をまくようなものだが、買収で大きくなったグループをまとめる上で不可欠だ。たとえばビームサントリーの管理職は全員、東京に呼んでサントリーの歴史や創業者精神を学んでもらっている。その上で、各国に合ったやり方で理念を生かしてもらう」
--社長に就いて丸3年たったが、後継については
「まだグローバル企業へ変わる緒に就いたばかり。ビームサントリーを牽引(けんいん)役とする成長軌道に乗り、また、私と佐治信忠会長が二人三脚で回している事業を担うだけの人材が育たなくては」
--創業一族の鳥井信宏氏(サントリーBWS社長)が指揮する国内酒類事業は好調だ
「BWSの設立は昨年4月。単年度では評価できないし、国内事業はもともと強かった。高いハードルだが、たとえばビールのシェアは(現在の約16%から)20%まで引き上げられるのではないか。バトンを渡す時期はそれほど先ではないが、そんなに近くもない」
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【プロフィル】新浪剛史
にいなみ・たけし 慶大卒。1981年三菱商事。91年米ハーバード大経営大学院。2002年ローソン社長、14年会長を経て、同年10月から現職。横浜市出身。